コメタリウムがやってきた2022年03月31日 21時26分19秒

今を去る8年前、1台のコメタリウムを紹介しました。

■コメタリウム続報

その優美な動きは、今も変わらず動画で見ることができます。


惑星の動きを再現するのがプラネタリウムなら、彗星の動きを再現するのがコメタリウムです。

彗星は近日点近くでは素早く、遠日点付近ではゆっくりと、楕円軌道を描いて進みます。いわゆるケプラーの第2法則というやつです。コメタリウムはそのスピードの変化を、歯車によって近似的に再現する装置です。

もちろん子細に見れば、地球だって、他の惑星だって、みんなケプラーの第2法則にしたがって動いているわけですが、軌道がまん丸に近いと、遅速の変化はあまり目立ちません。それに対してメジャーな周期彗星は、たいてい顕著な楕円軌道を描いているせいで、遅速の変化も劇的です。「これは見せ甲斐があるぞ…」というわけで、特に彗星の名を冠したコメタリウムという装置が作られたのでしょう。

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動画に登場したコメタリウムは、18世紀のオリジナルをほぼ正確に再現しています。

(コメタリウムの内部機構。上記動画より)

外観はもちろん、彗星の動きをシミュレートする心臓部が2枚の楕円歯車の組み合わせで出来ている点も、オリジナルと同じです。

(19世紀の絵入り百科事典に掲載されたコメタリウム)

(同上。部分拡大)

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このコメタリウムを製作されたのは、金属加工・金型成型がご本業の安達清志さんで、8年前の記事では、HN「Sii Taa」さんとお呼びしていました(なじみのあるお名前なので、以下もそうお呼びします)。このコメタリウムは、その技術力を生かして、部品からすべてSii Taaさんが手作りされた逸品です。

当時、この品を手元に置きたいと、どれ程願ったことでしょう。
でも、Sii Taaさんにとってのコメタリウムは、一種の技術的デモンストレーション、いわば余技であり、売り買いの対象ではなかったので、その思いが叶うことはありませんでした。

しかし、8年の歳月は自ずと世界に変化を生じさせます。
先日、Sii Taaさんから「死蔵しているよりは…」と、突如進呈のお話があったのでした。そのときの気持ちを何といえばよいか。単に嬉しい驚きと言っただけでは足りません。その後ろに!!!…と、ビックリマークを10個ぐらい付けたい感じです。ブログを続けていて本当によかった…と、その折も思いました。

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こうしてコメタリウムが我が家にやってきたのです。



うーむ、なんと端正な表情でしょう。


そして、このクランクを回すと…


彗星を示す真鍮の小球が、滑るように動き始めるのです。
その動きを、今一度上の動画でご確認いただければと思いますが、単に眺めるのと違って、自分の手の運動感覚がそこに加わると、一瞬自分が彗星になって、虚空を飛んでいるような気になります。

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求めよ、さらば与えられん。
人生、辛いことも多いですが、ときにはこういうこともあります。
Sii Taaさんのご厚意に、改めて深く感謝いたします。