パリ天文台の裏の顔2022年09月24日 07時29分28秒

昨日のペレルの版画には「相方」がいます。


こちらはパリ天文台を反対側(北側)から見たところ。
昨日の版画とサイズは同一で、1690年に一連の作品として制作されたようです。
こちらも細部に注目してみます。


天文台の足元には、豪華な馬車や馬上の貴顕紳士、それに恭しく礼をする人物群が描かれ、ここが王立の施設であることを示しています。まあ、こんなふうに人々で常時賑わっていたとも考えにくいですが、一種のパリ名所として、王族や貴族が訪れる機会も実際多かったのでしょう。あるいは王様の御成りか何かの場面を、これまた「異時同図法」で描いたのかもしれません。

一方、建物を囲む塀の外は庶民の世界で、かごを背負った人、物売り、徒歩(かち)で行く男たちの姿が描かれています。

ここにビジュアライズされているのは、「内」と「外」の峻別された世界であり、当時の身分制社会そのものです。

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昨日の版画と著しく違うのは、地上に学者や技術者らしき姿がまったく見当たらないことで、彼らは一体どこにいるのかといえば…


みな屋上で観測に余念がありません。


昨日の作品では、庭前に描かれていた大型望遠鏡や四分儀は、すべて屋上に引き上げられ、そこで活躍しています。そもそも天文台が何のために建てられたかを考えれば、こちらの方が実景に近いでしょう。

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天文台の外に目をやれば、そこに広がるのはまったくの田園風景。風車がやたら目に付きますが、これらは製粉用でしょう。

(GoogleMap掲載。Hiền PHAN氏撮影)

パリ天文台から同じ方向(南東)を写した現代の写真を見ると、天文台に付属する公園緑地の向こうは、延々と市街地が続いていて、まさに「桑海の変」を目の当たりにする思いです。

変わらぬものは、ただ天文台の建物と星ごころばかりなり…です。