天文ゲームの世界を眺める…赤い天文カード(中編)2023年01月28日 08時51分59秒

このカードの出版情報は、彗星カードに書かれていました。


発行は1874年。ゲームの正式なタイトルは『Game of the Universe』で、これはまあそのまんまですね。発行者は、マサチューセッツ州ウスター在住の Albert S. Lanckton なる人物。発行所として「Publishing Headquarters」(出版本部)という組織名らしきものも見えますが、その住所は私書箱扱いで、どうも私家版ないし個人出版ぽい感じです。

あまり部数も出なかったのか、私はこのカードセットを、後にも先にもこの1セットしか見たことがありません。さすがに全米ゲームコレクター協会(AGCA)の『ゲームカタログ:1950年までのアメリカのゲーム』(第8版、1998)にはちゃんと載っていましたが、でもランクトン氏が手掛けたゲームは、この「宇宙のゲーム」が唯一なので、彼は専業のゲーム業者というよりも、教育関係の人だったんじゃないかなあ…と、ぼんやり想像しています。


彗星カードもそうなんですが、たとえばオリオンのカードには、次のような一文が書かれています。

「凍てつく冬がその紺碧の空を拡げるとき、いざオリオンの巨大な姿が現れる。その黄金のベルトは目にもまばゆく、幅広の短剣は鮮やかな光を放つ。」
「彼の足元には光り輝く河〔エリダヌス〕が流れ、怒れる牡牛は間近で猛っている。彼の背後ではプロキオン〔小犬〕が吠え、シリウス〔大犬〕が唸り、さらに正面では鯨の怪物が咆哮を上げている。」

こうした表現からも、美文調のフレーズで天文学の知識(ここでは星座の配置)を教えようという著者の教育的配慮が、色濃く感じられます。

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手元にあるのは全部で21枚で、とりあえずカードの肩の数字の順に並べるとこんな感じです。


こうして眺めてみると、このカードには明らかに2つの系列(スート)があることがわかります。

(0~3のカード)

1つは惑星(太陽系)のシリーズで、
0・ヴァルカン(かつて水星軌道のさらに内側にあると考えられた幻の惑星)から始まって、1・月2・水星(3・欠)4・金星5・地球(6・欠)7・海王星8・土星(9・欠)10・太陽と並んでいます。さらに番外として、彗星日食のカードがあって、都合13枚です。

数字の並びと惑星の配列が一致しないことが気になりますが、ここに登場しない惑星は火星、木星、天王星の3つで、欠けているカードも3枚なので、数はちょうどピッタリ合います。

(4~7のカード)

もう1つは恒星(星座)のシリーズで、こちらは
(0・欠)1・天の川(2枚重複)、2・北極星3・北斗七星4・くじら座5・りゅう座6・しし座7・わし座8・おとめ座9・オリオン座(10・欠)という並びで、番外として「スペース」というカードがあります。

ここで欠落しているのは2枚で、あえて0番の代わりに1番の天の川を2枚入れてあるとすれば(その理由は不明)、欠落カードは1枚です。たぶんこれも星座のカードでしょう。それと恒星シリーズと惑星シリーズが対になるなら、さらにもう1枚番外カードがあったはずで(「新星NOVA」とかじゃないでしょうか)、それを加えると、こちらも都合13枚になります。

(8~10と番外カード)

結局のところ、これはハーフサイズのトランプのようなもので、数合わせでも数並べでも、トランプでできる遊びなら、ババ抜きや七並べ、あるいは神経衰弱でも、ポーカーでも、たいていの遊びができそうです。

(…と推理したところで、突如「後編」に続きます)