暑中お見舞い申し上げます2024年07月30日 05時56分29秒

とろけるような暑さです。

私の職場にも、一応「エアコン」と呼ばれるものはあります。しかし名前は「エアコン」でも、そこに求められるエア・コンディショニング機能はないに等しく、猛暑日になると室温が32度を下回ることはありません(これは以前も書きました)。

そんな環境で連日作業することが、人間の心身にいかなる影響を及ぼすか?
 731部隊は、極低温下における人体の凍傷実験を繰り返し行ったと聞きますが、今の状況はその非人間性に通じるものがありはしないか…と思ったりもします。

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「暑」という漢字は、「お日様」が上に乗っているので、太陽に関係するのかな?と思いつつ手元の『角川 新字源』を開いたら、案にたがわず、

 「会意形成。旧字は、日と燃える意と音を示す者シャ→ショとから成り、日光が燃えるようにじりじりと照りつける、「あつい」意を表す。」

…とありました。なるほど、これは暑そうですね。

さらに「者」という字を調べると、これは今では「もの」という読みと意味しかありませんが、元は「煮」と同字で、台の上で薪を重ねて火をたくさまを表しているんだそうです(したがって下の「日」は太陽ではなく、台の形ですね)。これまた、なるほどなあ…と感心することしきりです。

(「者」の解説。右は古代の字体。上から甲骨文字、金文、篆文)

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我々がふだん使っている単語には、よく考えると意味深遠なものがあって、「太陽」も確かにそのひとつです。これは「太陰」すなわち月と対になる語で、陰陽二気の説にいうところの「陽の大いなるもの」の意でしょう。

以下、吉野裕子氏の『陰陽五行と日本の民俗』(人文書院、1983)より(引用箇所はいずれもp.26)。

 「天と地、あるいは陰と陽は互いにまったく相反する本質をもつが、元来が同根であるから、互いに往来すべきものなのである。更に本質を異にする故に、反って互いに牽きあって、交感・交合するものでもある。」

 「混沌から派生した最初の陰と陽、あるいは天と地の二元は、根本的二大元気である。この二元が交感・交合し、その結果天上では、太陽(日)と太陰(月)、そのほか木星・火星・土星・金星・水星の五惑星をはじめ、諸々の星が誕生した。太陽は陽の気の集積、太陰(月)は陰の気の集積であるから、天上界が描かれるとき、太陽は東、月は西をその正位とし、星は中央を占めることになる。」

太極図。陰陽和合、あるいは陰陽未分化の始原状態をシンボライズしたもの)

夏もまた陽にして、自ずと冬の陰と引き合うことで、季節は秋から冬へと遷移してゆくわけです。それを期待しつつ、さあ元気を出しましょう。…という「元気」もまた深い言葉で、ミクロコスモスたる人間は、その身中に深遠なる「元気」を秘めていると、昔の人は考えたわけです。

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暑いと頭が働かず、ぼんやりどうでもいいことを考えますが、それが人間にとって自然なありようでしょうから、ここは自然に逆らわず、思う存分ぼんやりすることにします。(そういえば「自然」もまた深そうですね。)

コメント

_ S.U ― 2024年07月30日 07時13分53秒

昔見た子ども向け学習雑誌の漢字の覚え方に「日の下の者は暑い」というのがありましたので、これは真理だろうなとずっと思っていましたが、者自体ですでに熱いとは今日まで知りませんでした。

 ところで、ちょっと人から聞いた話ですが、「夏は暑いに決まっているのに、なぜ、人は毎日『暑い、暑い』と言うのか。暗いに決まっている夜を毎晩『暗い、暗い』と言う人はいないではないか」という批判とも揶揄とも言える疑問を聞いたのですが、これはどういう論理あるいは心理なのでしょうか。

_ 玉青 ― 2024年07月30日 18時30分25秒

あれは多分生理的な理由があって、「暑い」という言葉を盛んに発することで、肺の換気を促し、それによって体温を下げる効果があるんじゃないでしょうか。自己観察すると、「暑い暑い」という前に、必ず「あー(暑い暑い)」というのが伴い、この「あー」の部分でかなり空気が交換されています。要は犬が舌を出してハアハアやるのと同じですね。ですから、言葉としては「暑い」でも「寒い」でも何でもいいのですが、「暑い」がいちばん社会的に差し障りがないのと、構音にあまりエネルギーを使わないところが良いのでしょう。

それと、もう一つ考えうるのは、これは痛覚からの類推になりますが、痛みの場合は無言で我慢するより、声に出す方が確かに痛みが軽減されるという研究があるそうです。つまり、「痛い!」と叫ぶことは痛みに対するマスキング効果を持つということです。よく、「うるさい!暑いと言ったら涼しくなるのか!」と怒る人がいますけれど、これは実際涼しくなっている可能性もあるので、怒る方が間違っているのかもしれません(暑さに関するマスキング効果が検証されているかどうかは不明です)。

_ S.U ― 2024年07月30日 19時06分44秒

なるほど。「暑い」には、発声によるマスキング効果がある、自分の経験の範囲ですが、説得力がありそうに思います。いっぽう、「暗い」は暗いのが嫌だとしてもとくに効果はなさそうです。ただし、これには、効果に個人差があるでしょうから、疑問を持つ人や怒る人は、自身でマスキング効果を体感したことがないのかもしれません。だったら、他人が言うとうるさいのは事実で、かつ、「暑い」と言われると余計暑く感じるのもごもっともで、それはやむをえないことになると思います。

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