耳をすませば2025年02月01日 16時32分29秒



棚の奥の埃を払っていて、久しぶりにこの品と対面しました。


総身の大半が巨大なコイルによって占められている、ごくシンプルな鉱石ラジオです。


まだ同調用のバリアブル・コンデンサ(バリコン)もなくて、このつまみを動かし、コイルと板バネの接点の位置を変えることで、異なる周波数を受信できるようにする仕組みです。


木と真鍮部品で組み上げた本体側面の表情。


その左上に位置するこのパーツが、鉱石(方鉛鉱)と細いワイヤからなる検波器、通称「猫のヒゲ(cat's whisker)」です。これぞ鉱石ラジオの心臓部。クルクル巻かれたワイヤの先で慎重に鉱石の表面を探って、電波をうまく受信できる位置を見つけるこの瞬間こそ、鉱石ラジオファンにとって最も心躍る時でしょう。


上とは反対側の側面。ラベル(後から貼られたものかもしれません)には「Radio」の文字が見えますが、それ以外はちょっと判読不能です。こちらにも真鍮製の端子が2つあって、たぶんアンテナとアース(接地線)用。


このラジオは、1920年代に作られたもののようです。
製造国は不明ですが、ヘッドフォンと同じく、本体もフランス製かもしれません。


最近、この手の話題が少なかったですが、こうして見るとやっぱりいいなあ…と思います。小林健二さんの作品も思い出すし、ジュブナイル・サイエンスというか、科学に向けて抱いた、少年少女の見果てぬ夢が、まだその辺に漂っている感じです。

コメント

_ S.U ― 2025年02月03日 11時55分51秒

ラベルの下の行は、
Eiffel 12W-24W
でしょうか。
エッフェル塔が無線塔として使われたことと関係あるのかもしれませんが、ワット(電力値)というのは、普通は放送電波の強度を指すのでしょうが、12-24Wは、個人の無線並みで、公共ラジオ局としては弱すぎかもしれません。

_ 玉青 ― 2025年02月06日 18時41分14秒

これは有用な情報をありがとうございます。
となると、やっぱりフランス生まれのラジオかもしれませんね。
エッフェル塔には、1920年から1940年まで、「エッフェル塔ラジオ(Radio Tour Eiffel)」というラジオ局があったそうなので、それも何か関係するかもしれません。
https://fr.wikipedia.org/wiki/Radio_Tour_Eiffel

_ パリの暇人 ― 2025年02月07日 06時34分34秒

ラベルには、" 1re Radio /
Tour Eiffel 12H - 24H [12時 - 24時] " と書かれていると思います。
1re はPremièreの略で、英語のFirstです。

_ 玉青 ― 2025年02月08日 11時39分00秒

さらなる情報をありがとうございます。これはいよいよもってフランスであり、パリですね。100年前のフランスの人が、レシーバーを耳に押し当て、熱心に鉱石の表面を探っていた様が目に浮かびます。

時代は一寸ずれますが、1940年のパリのラジオ・シテの放送の一コマがYouTubeにアップされていて、ラジオ時代の、そしてナチス占領前夜のパリの空気が髣髴としました。
https://www.youtube.com/watch?v=hF2_JzyBe7s
当時の人は、それこそ全身を耳にしてラジオを聞いていたのでしょうね。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック