たけのこの里を訪ねて2025年02月08日 11時25分02秒

博物趣味…ともちょっと違うかもしれませんが、気になったことを書きます。

   ★

話は昨年の暮れに遡ります。
暮れも暮れ、大みそかの日に、きのこの図譜の話題を書きました。


そしてきのこのライバルはたけのこですから、今度はたけのこの図譜が気になりだしました。まあ、「たけのこの図譜」というのは無いので、竹類、すなわちタケとササの図譜を探したわけです。

調べてみると、竹類図譜の中では、大正3年(1914)に出た『坪井竹類図譜』というのが、今も王者の位にあるようでした。これは「竹林王」の異名をとった坪井伊助(1843-1925)がその生涯をかけてまとめ上げた、100枚余りの彩色図版から成る図譜です。昭和52年(1977)には、有明書房から復刻版も出ました。

博物趣味の盛んだった19世紀のヨーロッパでも、そもそも竹類が分布しない地の利の乏しさはいかんともしがたく、散発的な報告があるのみで、竹笹類のモノグラフはついぞ現れませんでした(と断言するのも危険ですが、管見の範囲では目に入りませんでした)。ですから、『坪井竹類図譜』は、世界的にも貴重な図譜ということになります。

とはいえ、ふとした出来心から話題にするためだけに、ウン万円もする大部な古書を買うのは、さすがに酔狂が過ぎるので、この件はいったん沙汰止みになったのでした。

   ★

しかし、その過程で別のことが気になりだしました。
竹類の図譜を探していると、「富士竹類植物園報告」というタケ類に関する報文集がやたらとヒットするのです。

■富士竹類植物園公式サイト https://fujibamboogarden.com/light/index.html

同園は今も盛業中です。
静岡県駿東郡長泉(ながいずみ)町に所在し、電車だと三島駅が最寄り駅で、そこからタクシーで20分だと案内にはあります。

研究資料館をも併設した立派な植物園で、サイトに書かれた「日本唯一の竹の植物園」の名に恥じません。いや、それどころか、その後取り寄せた手元のリーフレットには、「世界唯一の竹の植物園」だとあります。


(このリーフレット自体は昭和後期のものと思います。入園料大人300円とありますが、現在は500円)

私が気になったのは、この立派な施設の成立事情が公式サイトのどこにも書かれていない(開設年すら記述がない)ことです。この手の施設のサイトには、必ず「About Us」の項目があって、「History」のページがあるのが普通でしょうが、そうしたページが一切ないのが、ちょっと不思議な感じです。

上のリーフレットには、辛うじて「本園は昭和26年に竹の蒐集が始まり、以来竹の研究も行い、「日本竹笹の会」と言う研究機関を設け多くの人に利用されています。」という一文がありましたが、それにしてもどういう経緯で設立されたのか、開設者は誰なのか、そうしたことは一切分からないのでした。

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でも、これは少し調べたら分かりました。
そして、そのことがあまり表に出てこない理由もぼんやり見えたような気がするので、そのことを少し書き付けておきます。

(この項つづく)

コメント

_ 月夜のうさぎ ― 2025年03月11日 10時54分30秒

こちらの竹類植物園が好きでよく出入りしている者です。先日ちらっと宗教にもかかわりがある?というようなことを聞き、検索したらこちらのブログを見つけました!とても興味深く拝見させていただきました。

現在のご子息?は表立って植物園にはかかわらず宗教法人としても活動されていないようですが、ここを残したいという気持ちは強いようです。
繁殖力の強い竹笹を、交雑しないように、そして交わらないように管理されている職人さんがすごいなと行くたびに感じています。
もしお近くにこられた際は、寄ってみてください(^^)結構山の方ですが。苦笑

_ 玉青 ― 2025年03月11日 22時13分46秒

月夜のうさぎ様

辺境のブログにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
また、富士竹類植物園の現況をお知らせいただいたことに、重ねてお礼申し上げます。

こう申しては何ですが、富士竹類植物園のような収益に結び付きにくい施設を維持管理するのは、それだけでも大変な苦労がおありでしょうし、仰る通り多数の竹類の適正管理には細心の注意が必要でしょうから、関係者のご努力には本当に頭が下がります。学問的にも貴重な施設が、今後も永く存続することを願ってやみません。

機会があればぜひ訪問して、すがすがしい竹の葉擦れの音に耳を澄ませつつ、先人の苦労を偲びたいと思います。

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