Once Upon a Time in America ― 2025年04月01日 21時28分15秒
年度替わりを口実にブログの更新をさぼっていましたが、更新が滞っていたのはそればかりではなく、和骨董に関心が向いていたというのも大きな理由です。というのも、ふとした出来心から七夕関連の品を探しはじめ、そこから「乞巧奠」の話題へ、さらに冷泉家の年中行事へと関心が横滑りして、しばし天文のことが頭から消えていたのでした。
とはいえ故郷忘じがたく、一通り外の世界を眺めれば、心はやはりなじみの世界に戻ってきます。
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上の写真は暗くてちょっと分かりにくいですが、
こうすれば一目瞭然ですね。
これは、パロマー天文台の200インチ望遠鏡を収めた大ドームをかたどった塩・コショウ入れです。
この品、小さいなりによく出来ていて、脇っちょには階段のついた出入り口もあるし、
かすかに覗く大望遠鏡の気配も、なかなか真に迫っています。
しかし、この品が興味深いのは、そうした造作ばかりではありません。
底面や側面に鋳込まれた「JAPAN」の文字が見えるでしょうか。
これはおそらく1950~60年代に日本の町工場からアメリカに輸出され、2025年に帰国したばかりの「里帰り品」なのです。
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1948年に完成し、その後も長く世界最大を誇ったパロマーの大望遠鏡。
それはアメリカが圧倒的な影響力を世界に及ぼしていた時代の象徴に他なりません。そして当時の日本は、こうしたこまごましたものを輸出して、必死に外貨を稼ぐ国であった…というのが、問わず語りに伝わってくるのが、この品のひとつの見どころじゃないでしょうか。
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トランプという人は盛んに「Make America Great Again!」と叫んでいますが、いかにも空しい気がします。むしろ彼がそう叫ぶたびに、どんどんアメリカは卑小な国になっている気すらします。
片や日本はといえば、なりふり構わず塩・コショウ入れで外貨を稼ぐ活力も失い、経済も文化もずるずる後退を続け、今や「撤退戦」の様相を呈しています。
小さなパロマーを見ながら、ぼんやり世界の来し方行く末に思いをはせる―。
今年はそんな年度はじめです。
コメント
_ S.U ― 2025年04月03日 18時52分30秒
_ 玉青 ― 2025年04月05日 18時34分13秒
>パロマー山付近で売っていたお土産
おそらくそうなのでしょうね。でも、パロマーは人気者でしたから、もうちょっと広い範囲、たとえばカリフォルニア一円で売られていたかもしれません。パロマーに先行する似たようなお土産品としては、「リック天文台のスプーン」というのもあります。銀製スプーンに山上のリック天文台の建物が鋳込んであるという、ごく他愛ないスーヴェニアですが、今でもeBayにたくさん出品されているところを見ると、当時よっぽど売れたのでしょう。いずれもアメリカの天文趣味史の一面を物語る品かもしれません。
>よくみたら、「日本製」
あはは、ありがちですね。その後「世界の工場」の移動に連れて、日本製が中国製に、さらに東南アジアの国々に、この手の物のふるさとも変わりつつあるんでしょうが、上の品の場合、「日本製」というのが、時代の刻印として、今となってはかえって貴重ですね。
まあ、「三丁目の夕陽」的に過去を懐かしんでいる場合ではなく、日本も再び貧困国となりつつありますから、この調味料入れを先達として再度刻苦すべきである…かどうかは定かでありませんが、いずれにしても試行錯誤が続くことでしょう。
おそらくそうなのでしょうね。でも、パロマーは人気者でしたから、もうちょっと広い範囲、たとえばカリフォルニア一円で売られていたかもしれません。パロマーに先行する似たようなお土産品としては、「リック天文台のスプーン」というのもあります。銀製スプーンに山上のリック天文台の建物が鋳込んであるという、ごく他愛ないスーヴェニアですが、今でもeBayにたくさん出品されているところを見ると、当時よっぽど売れたのでしょう。いずれもアメリカの天文趣味史の一面を物語る品かもしれません。
>よくみたら、「日本製」
あはは、ありがちですね。その後「世界の工場」の移動に連れて、日本製が中国製に、さらに東南アジアの国々に、この手の物のふるさとも変わりつつあるんでしょうが、上の品の場合、「日本製」というのが、時代の刻印として、今となってはかえって貴重ですね。
まあ、「三丁目の夕陽」的に過去を懐かしんでいる場合ではなく、日本も再び貧困国となりつつありますから、この調味料入れを先達として再度刻苦すべきである…かどうかは定かでありませんが、いずれにしても試行錯誤が続くことでしょう。
_ S.U ― 2025年04月06日 08時34分19秒
>この調味料入れを先達として
そうですね。輸出に有利な関税対策をしても今のトランプでは報復の追加になるだけでしょうし、インバウンド振興も限度だとしたら、輸出品目を充実させるか、国内需給を重視するかですが、トレードオフの成分があって試行錯誤でも決めにくい選択でしょうね。まずは、ソルトペッパーの辛味を嘗めながら考えるのでしょうか。
そうですね。輸出に有利な関税対策をしても今のトランプでは報復の追加になるだけでしょうし、インバウンド振興も限度だとしたら、輸出品目を充実させるか、国内需給を重視するかですが、トレードオフの成分があって試行錯誤でも決めにくい選択でしょうね。まずは、ソルトペッパーの辛味を嘗めながら考えるのでしょうか。
_ 玉青 ― 2025年04月06日 13時01分29秒
(笑)まさに臥薪嘗胆、肝の代りにせいぜい辛いものでも嘗めてひと踏ん張り、でしょうかね。
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昨今の日本は、オーバーツーリズムだそうで、京都などは混み合って、日本人の修学旅行ができなくなっているそうです。それでも、経済上、インバウンド推進を止めるわけにはいかないので、観光税や宿泊税を取って対応するのだそうです。場所によっては、外国人からだけ徴収というのもあるそうで、外国頼みは昔と同様ですが、その態度は大きくなったように思います。