あれがポラリス2025年06月15日 11時47分54秒

昨日の品からの連想ですが、星石先生の蔵書印と一寸似たものが手元にあります。

(全長78mm。私の手と比べたら、ちょうど中指の長さと同じでした)

まあ、見た目はご覧のとおり全然似てないんですが、似ているのはその機能です。


このデコラティブな金属細工の先が、やっぱり印章になっているのでした。


これは書状を蝋封するためのシーリングスタンプで、たぶん19世紀の品でしょう。


スタンプのヘッドはオニキス(縞めのう)を陰刻したものですが、ここまで寄っても図柄が分かりにくいので、購入時の商品写真をお借りします。

(コントラスト調整+左右反転画像)

星を指し示す手と「Bear」の文字が、約1cm四方の石面にきっちり彫り込まれています。

何となく謎めいた図柄で、その意味するところは想像のほかありませんが、その文字はたぶん持ち主が「Bear」家の一員であることを示すものでしょう(Bear という姓は特に稀姓ではありません)。

そしてその名前から「天空の熊」、すなわちおおぐま座・こぐま座(英名は Great Bear と Little Bear)を連想し、それを北極星を指し示す手として表現したんじゃないでしょうか。そこからさらに、“我らBear一族は、常に志操の極北を示す指針たらん”…とまで説教臭い意味をこめたかどうかは分かりませんが、でもヴィクトリア朝の人だったら、それぐらいのことは考えたかもしれません。

   ★

 大ぐまのあしを きたに
 五つのばした ところ。
 小熊のひたいの うへは
 そらのめぐりの めあて。

上の想像の当否は不明ですが、賢治の「星めぐりの歌」を聞きながら眺めれば、ここにも天文古玩的情趣が流れるのを感じるし、そしてこの品もまた星と石の取り合わせであることを、天上の星石先生に報告したくなるのです。

コメント

_ S.U ― 2025年06月17日 13時29分24秒

日本の熊井さんや熊野さんや、江戸っ子の熊さんは、特別の位置にあるのですね。日本には熊の星座はなかったかと考えましたが、アイヌの星座では、北斗が熊でしたか。

_ 玉青 ― 2025年06月17日 19時27分14秒

そういえば、S.Uさんはこの話をご記憶でしょうか。

■「星座」の誕生(前編)
https://mononoke.asablo.jp/blog/2020/06/06/9254759

抱影の星の和名調査の結果、あやうく日本でも「熊座」が誕生しかけた…というのですが、まあこうなると、熊さん顔負けの落とし噺で、笑ってばかりもいられませんが、やっぱり可笑しい話だと思います。

_ S.U ― 2025年06月18日 12時08分30秒

あぁ、これなんとなく覚えています。抱影の『星三百六十五夜』も読みました。抱影の話だったかどうか忘れましたが、地方の老人に星の話を聞きに行ったら、「星のことなら、学校に行っている孫に聞いてくれ」と言われた、という話もどこかで読みました。

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