星のかさね色目(前編)2024年04月07日 06時46分38秒



ふと思いついて、1877年に出たギユマン『Le Ciel』(第5版)を開いてみます。


その<図版41>には、美しくも愛らしい二重星(多重星)が描かれています。

図版タイトルの「étoiles colorées」は、英語でいう「colored stars」のことで、鮮やかな色味を帯びた恒星を指します。まあ、どんな星でも何らかの色はあるので、ことさら「colored」と呼ぶ必要もないわけですが、眼視とモノクロ写真の時代には、白く輝く星々の中にあって色味の強い星はやっぱり目立つので、こう呼ばれたのでしょう。いずれにしても、これは古風な言い回しで、現在日本語の定訳もないと思いますが、強いて訳せば「有色星」でしょう。

   ★

最近のマイブームに合わせて、二重星の色彩のコントラストを、平安装束の「かさね色目」に当てはめてみてはどうか?と思いつきました。というよりも、「かさね色目」の本を読んでいて、二重星のことを思い出したというのが正確ですが、いずれにしても、これは我ながら風雅な試みと自画自賛。

ギユマンの図版は、望遠鏡ごしに見る現実の二重星の色とはずいぶん違う気がしますが、ここではあくまでも図版を基準に、下の本と対照してみます。

(長崎盛輝・著『新版かさねの色目―平安の配彩美』、青幻社、2006)

(この項つづく)

コメント

_ toshi ― 2024年04月07日 15時54分53秒

ご無沙汰しています。むかし「気象と天文の図鑑」か何かで,美しい二重星のページがあって,イルカ座γ星?でしたでしょうか,緑色と紫と書かれていたように思うのですが,よく考えてみると緑の星というのはスペクトルではあっても色温度の系列にはなかったはずで,別の資料にあたってみても緑の星というのは記載されていませんでした。時代の変化でしょうか。

_ 玉青 ― 2024年04月08日 05時57分37秒

こちらこそご無沙汰をしております。
緑の星は今日の記事にも盛大に登場していますが、昔の人は緑を感じやすかったんでしょうかね。色彩は物理的な実体を持ちつつ、心理的な影響も強く受けますから、何となく「時代の色」めいたものがある気もします。過去記事を見ると、サファイヤブルーと呼ばれるアルビレオ伴星も、かつては緑がかって感じる人が結構いたようです。

■天空の色彩学(その4)
https://mononoke.asablo.jp/blog/2015/03/28/7599019

あるいは、19世紀に屈折望遠鏡の全盛時代が訪れたとき、当時のアクロマートだと緑の色収差が抑えられなかったことも影響しているのかな?とも、ちらっと思いました。

_ toshi ― 2024年04月10日 17時32分09秒

確かに色の感じ方は近隣の色の状態でよく錯覚すると言われていますね。色彩学という学問もあるのでしょうね。

_ 玉青 ― 2024年04月11日 06時01分28秒

ついさっき検索して知ったことですが、色の世界には「日本色彩学会」という堂々たる団体があり、その会長挨拶を拝読すると、「そもそも色彩は、物理、化学、工学、情報学、芸術、教育学、心理学、言語学、歴史学など理数系から人文社会系にいたる広い学術分野に関連し、その応用はファッション、印刷、化粧、塗料、照明、建築、マーケティングなど、幅広い領域にわたります。」…ということで、ものすごく学際的な学会のようです。我々としては、ぜひここに天文学を付け加え、天空の色彩学を展開してほしいですね!

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック