世界はひとりの痴れ者によって窒息するのか2026年03月01日 19時18分12秒

トランプという人は、いったい自分を何だと思っているのでしょうか。

ハメネイ師について、その抑圧的な姿勢を批判するイランの人がいるのは事実でしょうが、だからといって、よその国が恣意的にミサイルを撃ち込んで、他国の指導者を抹殺していい理由にはなりません。

もはや無理が通り過ぎて、道理が憤死しかねない状況です。

それにしても…
前後の流れを見ていると、トランプという男はよっぽどエプスタイン文書から世間の目をそらしたいのかなあ…と勘繰りたくなるし、仮にそんな理由で子供を含むイランの人々が命を落としたのだとすれば、かける言葉が見つかりません。

彼は畳の上で死ぬべき人間ではないと、私は心底思っています。

二廃人、選挙をふり返る2026年02月09日 16時22分36秒

やあ、選挙が終わったね。

ああ、ずいぶん極端な結果だったな。

ぼくはもうちょっと与野党が拮抗するかと思ってたよ。

まさに地滑り的大勝利だな。

今回の選挙は、なんだかずいぶんふわふわした、妙な手触りだったね。リアリティの感じられない選挙というか。

ふわふわどころか、今回の選挙はまさにワンイッシューの選挙だったじゃないか。

え、そんなものあったかい?結局、何が争点かよく分からなかったけど…。

ワンイッシューは、高市さんそのものさ。

なるほど、「サナちゃん選挙」か。

そう。「これは私への信任を問う選挙です」みたいなことを勝手に宣言して、全部自分の土俵に乗っけて、自分の支持率が高いうちに勝負に出りゃ、そうなっても不思議はない。ありゃ大阪で府知事と市長がつるんで、ひと芝居を打ったときの手口に学んだのかもしれんな。

自民党の大勝ということは、野党…この場合は立民と公明だけど、彼らの大敗と裏表だろ。そっちはどうしてなの。

「サナちゃん選挙」となれば、野党は手も足も出ないよ。何せ論点がないんだから。何をどう訴えればいいのかわからない。まさに垂直の壁を前にしたようなものさ。生活者ファーストなんて、当たり前すぎて何のインパクトもない。

なるほどなあ、高市さんも大した知恵者だ。でも「大義なき選挙」とかはみんな言ってたけど、そういう明白なカラクリにはあまり気づいてなかったね。

手品をやるときは堂々とやらないとダメさ。

それにしても、世間の人はそんなに自民党をありがたいものと感じているのかなあ…。統一教会とか、裏金問題とか、いかがわしいニュースは一体どこに消えちゃったんだろう。

たしかに情報操作もうまかったんだろ。「文春砲」も打つタイミングが悪かった。選挙期間中は報道も追っかけをしないから。

これからどうなるんだろうね。

改憲発議とか、きな臭い話がくすぶるのは間違いなかろうよ。しかし咲けば散り、満ちては欠ける世のならい。高市天下がこのまま続くってこともないだろ。

まあ自民党内の暗闘だってあるだろうし、これだけ議員を抱えれば、身持ちの悪い議員の不祥事だって出るだろうしね。でも、プーチン体制みたいになったらヤダね。

確かにな。まあ、そうなったら万事休すだけど、意外にその前にフェーズが変わるんじゃないかな。

というと?

今後の分水嶺は、期待した「飴」がもらえなかったときに、人々がどう反応するかだと思う。安倍さんのときもそうだったけど、高市人気の巨大な源泉は「株」さ。儲かりさえすれば、せっせと高市大明神にお神酒を供える人だって、貧乏神の影がちらつき始めたら、さてどう出るか。思想信条に基づいて支持している人を除けば、世間は存外シビアだからな。

なるほどね。それを思うと、老後資金問題で「皆さんせっせと投資に励んでください」みたいな話になったとき、庶民までもがNISAだなんだで財布をはたいたのは、虎の子を政府の人質に差し出したのと一緒だね。あれで結構、政府にモノを言いにくくなった気がする。

まあ、お前さんにしても、俺にしても、その点は何の心配もいらないからな。これからも大いにモノ申していこうじゃないか。

よし、それならこっちもお神酒といこう。ちょうどここに、こんないいものがある。

なんだ、結局そうなるか。まあいいや、よし持たざる者の意地に乾杯!

乾杯!

【閑語】明日は…2026年02月07日 14時31分12秒

…投票日です。
超短期決戦というだけあって、今回は妙に早いですね。

   ★

「あの人は政治家ではなく、政治屋だ」みたいな言い方があります。
これはもちろん「けなし言葉」ですけれど、でも、このところの政治を見ていると、政治屋ならまだ上出来の部類だ…という気がしなくもありません。なにしろ政治屋なら、少なくとも政治はしているわけですから。

昔から修身・斉家・治国・平天下といいますが、そもそも修身の段階でつまずいている候補者も散見され、天下国家を論ずるには100万年早いと、わが身を省みず嗤いたくなるときもあります。

大国の覇権主義が横行する世界で、今は誰が国の舵取りをしても難しいことに変わりはないでしょうが、それでも相応の見識と想像力を持ち、説得力のある議論を展開できる人にそれを任せたいと思います。

やたらと大向こう受けを狙う人、人の話を聞けない人、自己愛の強い人、権勢欲をギラギラさせた人、結局誰のために政治をやってるんだろうと首をかしげたくなる人。一見もっともらしいことを言っても、人間の地金は自ずと表れるもので、そういう人に今の政治を任せる気にはとてもなれません。

   ★

私は高市氏に批判的なので、自民圧勝の予想に苦いものを感じていますが、とはいえ党内基盤の弱い高市氏が、この後も長期安定政権を築くことは難しいでしょうし、今後の政治のありようについては、少し長いスパンで見据えて、自分なりの意見をしっかり持ちたいと思います(別に政治家でなくても、国民には国民なりの見識が当然あってよいわけです)。

宇宙科学戦争かるた(前編)2026年01月04日 14時02分01秒

三が日も過ぎましたが、正月ネタで「カルタ」の話題です。


こんな昭和レトロなカルタを見つけました。
タイトルは「宇宙科学戦争かるた」


上は購入時の商品写真で、帯封を解く前の状態です。
上段は「い」から始まり、「いろはかるた」の形式を踏襲していることがわかります。下段の方は「う(ゐ)のおくやま…」と続きますが、戦後なので、「ゐ」の札は含まれません。


サンプルとして、冒頭の「いろはにほへとちり」まで並べるとこんな具合。あとは推して知るべしです。
後述するように、この品は1960年代に出たものと推測しますが、描かれた内容は戦前の海野十三のSF冒険小説さながらで、当時にあってもレトロな感じを伴うものだったんじゃないでしょうか。


「追拂/おひはらう」には、旧字体が混じり、振り仮名も新・旧のかなづかいが混在しています(旧仮名なら「おひはらふ」)。作者の年恰好が何となく想像されます。


中には「宇宙科学」のイメージとは程遠い、レトロというより、明らかに「アナクロ」な札も含まれています。

   ★

このカルタが表現している「科学」と「宇宙」のイメージについて、さらに子細に見てみようと思います。

(この項つづく)

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【閑語】

新年早々、アメリカがベネズエラを攻撃し、マドゥロ大統領夫妻を拉し去るという無茶なニュースが流れてきました。

宣戦布告を経た正規の戦争でもないのに、他国に対してなぜそんな振る舞いができるのか。アメリカはそんな特権的な地位をいったい誰から授かったというのか。仮にアメリカの言い分を認めて、マドゥロ大統領が「悪者」で、アメリカはそれを懲らしめる「正義の味方」だとしても、その正義の使い方はあまりにも恣意的で、そんな者に「正義」を口にする資格はなかろうと思います。

大国の振る舞いを見ていると、力ある者による切り取り次第が横行した戦国の世にあるかのような錯覚を覚えますが、現実は戦国の世ではなく、国家間の枠組みと国際法が機能している21世紀の世界です。アメリカだろうが、ロシアだろうが、中国だろうが、そんな手前勝手な振る舞いを認める余地は皆無であり、日本政府もその点は筋を通してほしいと思います。

奈良の女とは2025年09月23日 08時38分37秒

NHKのサイトに「【演説全文】高市早苗氏 自民党総裁選挙」というのが掲載されていました(9月22日付)。

冒頭の馬だか鹿だかのくだり、あるいは家持の和歌の珍妙な披露(ご本人も「下手ですが」と断っています)に批判が集まっていますが、その下をずーっと読んでいくと、高市氏はこんなことも述べています。

 「坂本龍馬が言いました。3つ年上の乙女姉さんに宛てた手紙です。「日本を今一度せんたくいたし申候」。高市早苗これを頂きます。日本をいま一度、洗濯します。長いことかけてたまった染みや汚れ、すっきりさせます。公平で公正な日本を実現して若い方に「ああよかった」と思ってもらえるようにします。そのため、私、高市早苗は決意を強く、まっすぐに立って推進してまいります。」

破顔一笑…という表現は、こういうときに使うのか使わないのか分明ではありませんが、私が大笑いしたのは事実です。どうも高市氏は、ご自身もまた染みや汚れだとは露ほども思われてないようです。まあ、こんなところでダシにされた龍馬もいい迷惑でしょうが、少なくとも龍馬のこのセリフを、権力側の人間が口にするのはいかにも変だし、その珍妙さを自覚しない高市という人も、ずいぶん変な人だと思います。

   ★

ところで、テレビで高市氏を見るたびに、「醜怪」という言葉が私の脳裏に浮かびます。若い頃の写真を拝見すると、特に醜怪でもない、普通の人のように見えますが、年を重ねるとともに醜怪化している感があって、これは私自身の中に潜在するルッキズムやエイジズムのバイアスを考慮しても、なお強く残る印象です。

そして「40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て」というリンカーンの言葉に頷いたりするわけですが、ふとこの言葉の出典が気になりました。

探してみると、やっぱりその点を気にする人がいて、詳細な探索が既に行われていました。

■ Quote Origin: When You Are Young, You Have the Face Your Parents Gave You. After You Are Forty, You Have the Face You Deserve

確度の高い情報によれば、この言葉(に類するエピソード)は、リンカーン政権で財務長官を務めたエドウィン・M・スタントンに帰せられるべきもので、オリジナルの表現では「40歳」ではなく「50歳」だったとのことです。

ただし、その調査の過程で浮かび上がったのは、この「顔かたちは両親や神様から授かったものだが、人相にはその人の経験や生き様が表れる」という見解は、時代や国を超えて多くの人が述べており、上記コラムの結論も、「この変化に富んだ格言群は、その表現の多様性ゆえに、その起源を辿ることが困難であった。1891年の引用は、エドウィン・M・スタントンが1865年頃にこの短い格言を創作したことを示唆している。」というものでした。

それらの格言群が述べる「自分の顔に責任を持つべき年齢」は、20歳、30歳、40歳、50歳、60歳とだいぶ幅がありますが、まあどの年代でも、その年代なりの生きざまが顔に出る…というのが先人の意見なのでしょう。

いずれにしても、64歳となられた高市氏は、どの説に従っても自分の顔に責任を持つべきであり、その醜怪な印象は、氏の生き様の反映に他ならない…というのが私の個人的意見です。

Geminiの絵心から考えたこと2025年08月31日 19時18分57秒

徒然なるままにグーグルの生成AI「Gemini」と対話していました。
2025年のAIは、さすがにこなれた応答で、何を聞いてもたちどころに答えてくれるし、何と賢いのだろう…と思いましたが、一部にちょっと奇異なやりとりがあったので、メモしておきます。

   ★

まず私があれ?と思ったのは、テキストベースのやり取りのあとで、以下のような質問を投げかけたときでした。


なるほど、アスキーアートならOKなのか…と思って、早速オーダーしてみました。お題は「海辺の男女」です。


なんじゃこりゃ…とは思いましたが、ここまでは以前、Chat-GPTの旧バージョンでも同様の体験をしていたので、それ自体、あまり驚きはありません。問題は次の質問に対する答です。



Geminiは、自分の出力結果に自信満々で、まったく何の疑問も感じていないのは明らかです。ここで更に聞いてみます。



ものすごい自画自賛です。その自信はいったいどこから生まれるのか?釈然としないまま、質問を重ねてみます。


なるほど、「統計的な評価」に基づく限り、このアスキーアートらしきものは、完璧に自然な表現だと、Geminiは言い張るわけです。

もちろん、言い訳のように「人間は、アスキーアートの線の太さ、配置のバランス、そして作品が持つ雰囲気や感情によって、その「自然さ」や「芸術性」を感じ取ります。私の評価は、そうした主観的な要素を考慮したものではありません。」と言い添えるのも忘れてはいません。

しかし、そういうレベル以前の問題として、そもそもこの記号列はどう見ても「海辺の男女」ではない、という可能性を、Geminiは1ミリも考慮していないようです。

   ★

これは他愛ないアスキーアートだから、まだ笑い話で済むし、そのおかしさも目に見え易いわけですが、この調子でより深刻な問題について回答を出力されたら、本当に怖い話で、洒落にならんぞ…と思いました。もちろん、同じことはテキストベースのやり取りでも常に生じうるし、今後、生成AIのバージョンがどれほど上がろうとも、それは常につきまとうはずです。

「まあAIにも当然、得意不得意はあるよ。大事なのはAIをどう使いこなすかさ。まさにAIとハサミは使いようじゃないの?」…とは思うものの、人間が容易に使いこなせないほど強力なAIが登場するのは、たぶん時間の問題でしょうし、そのとき上のアスキーアートと相同の問題が起きたら?…という懸念を強く抱きます。

今の私は、その懸念に対する答を持ち合わせません。
もちろんAIに聞けば、たちどころに答えてくれるのでしょうけれど…。

一日三省とは言わずとも、一年一省ぐらいはできぬものか2025年08月16日 19時28分59秒

国内で初めて新型コロナの患者が発生してから、コロナの5類移行まで3年4か月。
これは真珠湾から敗戦までの3年8か月とニアイコールです。

太平洋戦争は非常に大きな歴史的出来事でしたが、我々の身近な経験に引きつけて考えれば、あのコロナ禍と同じぐらいの時間幅で起きたことです。

もちろん、太平洋戦争はそれ以前から中国大陸で続いていた戦争と地続きで、総称して「15年戦争」とも呼ばれます。でもだからこそ、あの最後の3年8か月だけで、300万人以上もの日本人が亡くなったという事実に驚愕し、かつ恐怖します。しかも亡くなった人は、それだけではないのです。

新型コロナを惨禍と呼ぶなら、あの戦争を何と呼ぶべきか。
私の語彙ではとても表現のしようがなく、言葉の無力さを感じます。しかも、それは天災ではなく、すべて人が為したことです。

誰が悪かったのか…という話はいろいろできるでしょう。でも、あらゆる立場を横断して、そこには反省があってしかるべきで、もし反省すらないとしたら、まことに度し難い話です。そう言って恥じない人は、それこそ人の皮を被った人ならざるものだと思います。

閑語…賛成!2025年07月21日 07時17分25秒

参院選は与党の大敗と、国民民主および参政党の躍進という結果に終わりました。

   ★

このうち参政党に注目すると、同党がなぜあれほど支持を集めたのか、これからいろいろ分析もされるのでしょうが、何か後ろ暗い勢力が陰で糸を引いていた…という陰謀論よりは、もっとシンプルに、それだけマスな支持層が存在したということでしょう。

参政党の構成要素といえば、「排外」、「反ワクチン」、「オーガニック」、「スピリチュアリズム」あたりだと傍(はた)からは見えますが、いずれもこれまで一定数の人々を惹きつけてきた主張ですから、それが数の力となり、参政党の躍進につながった…ということではないでしょうか。(そこに「陰謀論」や、「夫婦別姓反対」「共同親権推進」といった人々も絡んで、かなりの大所帯になったわけです。)

特にSNS論壇では、反ワクチンの支持層は相当分厚いものと見受けられたので、「参政党躍進の陰の立役者はコロナ禍だ」というのが私見です。

   ★

参政党については、「排外」ももちろん眉をひそめさせる要素ですし、メディアもそこに注目しがちでしたが、でもそれと同じぐらい、その「反科学(あるいは疑似科学)」的傾向は用心すべきだと思います。彼らが文部科学行政に影響力を行使し、ただでさえ弱体化している日本の研究体制に、さらにバックラッシュがかからないことを願います。

   ★

とはいえ、勢いで議席は得たものの、同党は上記のように基本的に「寄り合い所帯」なので、今後党内をまとめ、支持者を引き付け続けるのは、なかなか難しい作業だろうなあとも、余所ながら感じています。

愚や、愚や、汝を如何せん2025年07月19日 16時18分12秒

私事で恐縮ですが、明治生まれの祖母はあまり口を利かない人でした。
おとなしいことが美徳とされた時代を生きた人ですから、自ずとそうなったのかもしれませんが、でも祖父には常々言っていたそうです。「あたしは人前では口を利かない。何かしゃべると馬鹿だと分かっちゃうから…」と。

身内を誉めるのは気が引けますが、なかなか奥ゆかしい心掛けだと思います。
そしてまた奥ゆかしいプライドがそこにはあったと感じます。

今は、愚かなことを公言することに、何のためらいも感じない人がネットにあふれかえっています。そして「それは愚かだよ」と指摘されると、ますます得意げに愚かさを見せつけてきたりします。私も他人のことは言えませんけれど、でもあんな風に「嬉々として愚人たる」というのは、ちょっと理解しがたい心意です。

ひょっとして、あれは一種の悟道に達しているのか?寒山拾得的な何か?
…でも悟道に達した人が、そんな滅多矢鱈にいるわけはありませんから、やっぱりただの愚人なのでしょう。

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それにしても往来で公然と「非国民」という語を口にする政治団体と選挙候補者が現れるとは思いも寄りませんでした。まことに性質(たち)の悪い愚人たちだと思います。


閑語… I’ll see you in hell !2025年06月23日 21時59分03秒

日食の話題の途中ですが、ちょっと寄り道します。

   ★

「地獄」というのは、どの文化圏でもたいてい地の底にあることになっています。したがって、その最大距離は足元から約6400km(=地球半径)で、それだけ掘り下げれば、早くも「地の底」に達します。

反対に地表から6400km上昇しても、月までの距離の38万kmに遠く及ばず、せいぜい中軌道の人工衛星ぐらいの高さにしかなりません。ましてや惑星や恒星は、まだまだ遥かに遠い存在です。

   ★

距離を基準にした場合の、天上世界と地下世界のこうした極端な非対称性は、ギリシャ人には既知のことでした。

廣瀬匠氏の『天文の世界史』(インターナショナル新書)を参照すると、ギリシャ人は観察と推論にもとづき、月までの距離は地球の直径のおよそ30倍である…と正しい結論に達していました(少なくとも紀元2世紀の人であるプトレマイオスは、著書にそのことを記しています)。そして太陽は月よりもずっと大きく、ずっと遠くにあることも分かっていました。

古代インド人の場合、純粋思弁ではありますが、やはり似たような結論に達しています。

もののサイトによると、地獄の最下層にある「無間地獄」は、地上から4万由旬の距離にあるそうです。1由旬の解釈は諸説紛々としていますが、最短で約100メートだとか。これにしたがえば、無間地獄の位置は地下4000kmとなり、ちょうど現実の地球半径と同じオーダーになります。

一方、天界は遠いです。須弥山の山頂にあって、地上とは地続きの忉利天(とうりてん)にしても海抜8万由旬。さらに上層に浮かぶ「本当の天上世界」といえるのは、同じく16万由旬にある夜摩天(やまてん)からですが、これは天上世界のほんの「とば口」に過ぎず、その上に兜率天(とそつてん)、化楽天(けらくてん)、他化自在天(たけじざいてん)…と多くの「天」が積み重なり、最後は遥か無限のかなた、空間をも超越した無色界天に至るというのが、仏教の説く「天」だといいます(諸説あります)。

   ★

いずれにしても地獄はすぐ近くにあるのに、天界の住人になるのは大変です。
裏返せば、人間世界は天国よりも地獄に一層近い様相を呈しており、眼前の事実を前にして、それを否定できる人は少ないでしょう。

   ★

死後の世界としての地獄が本当にあるのかどうか、まあ無いのかもしれませんが、ネタニヤフやトランプという人を見ていると、人間が地獄という観念を必要とする理由がよく分ります。

トランプ氏あたりは、ひょっとして「地獄の沙汰も金次第」と高をくくっているかもしれませんが、現世でずるい商売をした悪徳商人には、彼ら専用の地獄が用意されているそうで、地獄もなかなか遺漏がないです。

(奈良国立博物館蔵・原家本『地獄草子』より。桝目をごまかした商人の堕ちる「函量所(かんりょうしょ)」)