小町石 ― 2026年07月11日 13時57分07秒
老残のこと伝はらず業平忌 登史郎
平安時代を代表する美男子・在原業平は、若年の艶っぽいエピソードこそ有名ですが、老いてから後のエピソードは伝わらないことを詠んだ句です。
業平忌は旧暦5月28日で、新暦に直すと今年は7月12日がそれに当ります。彼はちょうど今時分、梅雨が明けるか明けないかの頃合いに亡くなりました。
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この句の裏には、平安美女の代表である小野小町の方は、能「卒塔婆小町」に描かれるように、“老残”の姿がむしろ有名であることが伏在するようです。
美女もいつしか老い、そして白骨と化す。
女性の死体が腐朽する過程を描いた「九相図」が、特に小町と結びついて作成された例もあります。別に美女でなくても、すべての男女が同じ道をたどるわけですが、男性優位の社会では、女性の美貌に高い価値が置かれたので、いきおい美女の例が強調されたのでしょう。
(伝・英一蝶作。ウィキペディア「九相図」の項より)
小野小町は女乞食として晩年を迎えた…という文芸上の観念を受けて、小町の墓の伝承地は全国に点在します。ほかにも様々な小町伝説が各地に伝わるのは、大師信仰と同様、遊行する宗教者(この場合は「歩き巫女」)の影響だと言われます。
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そんな伝承のひとつに「小町石」、あるいは「小町の腰掛石」というのが、あちこちにあります。旅の途中で小町が腰をかけて休んだ石だというのですが、もちろん後世の付会でしょう。あるいは、今回検索して「小町しぐれ」という石材があることを知りました【LINK】。小町生誕伝説がある福島県小野町で産する花崗岩で、主に墓石に加工される…というのは「卒塔婆小町」との縁を感じて興味深く思いました。
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…と縷々書いたものの、以上のことはまったく無駄な前書きです。
本当は火山岩の一種である「Komatiite(コマチアイト)」のことを書こうと思ったのですが、日本人としてはどうしてもこれを「小町石」と呼びたくなるので、前置きとして現実に存在する小町石に言及しました。
(本題に戻してこの項つづく)

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