【閑語】 The Shape of the Nation ― 2024年09月28日 07時50分20秒
石破首相誕生というニュースと同時に、「石破ショック」「日本終わった」というフレーズがネット上に溢れました。でも、話を聞いてみると、そう言っている人の「日本終わった」の中身は、「株価が下がった」ということらしく、きっとその人の頭の中はそれで一杯なんだろうなあ…と思いました。まあ、経済の問題も大切ですが、そればっかりというのもさもしい話です。
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今回不思議に思ったのは、高市という人が石破氏と競ったことです。
高市という人は、その極右的イメージから「日本のルペン氏」みたいな人だという印象を持っていましたが、改めて考えると、ルペン氏は「フランス第一主義」を掲げてEUからの独立を志向するとともに、「貧困層の擁護者」を自認し、いわゆる新自由主義とは対立する立場です。そういう主張が、苦しい生活を送る国民のルサンチマンの受け皿になるのは理解できます。アメリカでトランプ氏が支持される構図も似たようなものでしょう。
でも、かたや高市という人は、対米従属に異を唱えるでもなく、企業優遇策に異を唱えるでもなく、そういう人がなぜ「岩盤保守層」の支持を得て、ポピュリズムの旗手となり得るのか、いかにも不思議な気がします。
ふたたび思うに、そこに共通するのは「栄光のフランス」と「栄光の日本」のイメージであり、表面的な政策の違いはあっても、その「栄光」のイメージこそが、人々の支持を集めた肝なのかもしれません。
個人と同様に国家も、本当に自信に満ちているときは、わざわざ虚勢を張る必要もないわけですが、「栄光」を声高に叫ぶということは、それだけ人々が自国の綻びと劣後を感じ取り、自信を失っている証拠なのでしょう。でも、虚勢は虚勢に過ぎないし、虚勢を張ったからといって国家が再生するわけでもありません。
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私は高市という人が首相にならなくてよかったと思いますが、石破氏も名にし負うタカ派ですから、剣呑なことには変わりがありません。それでも、外交にしろ経済政策にしろ、<反・安倍的なるもの>を今後どこまで打ち出せるのか、そしてタフ・ネゴシエーターとしての力量を発揮できるのか、その点に注目しながら、政権の舵取りを見守りたいと思います。
コメント
_ S.U ― 2024年09月29日 05時30分39秒
_ 玉青 ― 2024年09月29日 12時16分24秒
「岩盤保守層」と一応カギカッコを付けましたけれど、岩盤保守とはいったい何なんでしょうね?
たぶん本来は、憲法「改正」と靖国の国家護持を旗印に、日本のアンシャンレジーム復活をもくろむ日本会議系の人たちを指したと思いますが、反共カルトたる旧統一教会も隠然たる力を持っているようですし、加うるに一連の歴史修正主義者、嫌中・嫌韓の徒、外国人ヘイター、アンチフェミニズム、トランスヘイター、夫婦別姓反対派、共同親権推進論者、さらにはトランプ支持者とか奇怪な陰謀論者とか、いろんな色合いの人たちが重なり合い、混じり合い、本来両立しないものがそこでは両立する異観を呈しています。
総じていえば、現代日本の基軸的価値観である「民主主義」や「穏健リベラリズム」にプロテストする人たちなのでしょう。でもそうなると、結局「保守」でも何でもないことになるのですが、ちょっとこの辺は言葉のねじれが著しいです。
しかし、これらを単に「アブナイ人たち」「愚にもつかぬ有象無象」と切って捨てるのも実りの薄い話かなあ…と思ったりもします。きっと「岩盤保守層」のうちにも、素朴に良かれと信じてそう主張している人もいれば、自身の攻撃性を外部に投影して、その影に怯え過剰反応している人とか、あるいは私利を図って単に「為にする論」として勇ましいことを言っているだけの人とか、その主義主張の奥には、さまざまな「目的」や「動機」が潜んでいるはずで、表面的な主義主張よりも、むしろそこに注目することで、途絶えた会話のチャンネルが復活するかも…と、淡い期待も抱いています。
たぶん本来は、憲法「改正」と靖国の国家護持を旗印に、日本のアンシャンレジーム復活をもくろむ日本会議系の人たちを指したと思いますが、反共カルトたる旧統一教会も隠然たる力を持っているようですし、加うるに一連の歴史修正主義者、嫌中・嫌韓の徒、外国人ヘイター、アンチフェミニズム、トランスヘイター、夫婦別姓反対派、共同親権推進論者、さらにはトランプ支持者とか奇怪な陰謀論者とか、いろんな色合いの人たちが重なり合い、混じり合い、本来両立しないものがそこでは両立する異観を呈しています。
総じていえば、現代日本の基軸的価値観である「民主主義」や「穏健リベラリズム」にプロテストする人たちなのでしょう。でもそうなると、結局「保守」でも何でもないことになるのですが、ちょっとこの辺は言葉のねじれが著しいです。
しかし、これらを単に「アブナイ人たち」「愚にもつかぬ有象無象」と切って捨てるのも実りの薄い話かなあ…と思ったりもします。きっと「岩盤保守層」のうちにも、素朴に良かれと信じてそう主張している人もいれば、自身の攻撃性を外部に投影して、その影に怯え過剰反応している人とか、あるいは私利を図って単に「為にする論」として勇ましいことを言っているだけの人とか、その主義主張の奥には、さまざまな「目的」や「動機」が潜んでいるはずで、表面的な主義主張よりも、むしろそこに注目することで、途絶えた会話のチャンネルが復活するかも…と、淡い期待も抱いています。
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昔は、「革新」と「保守」でしたね。今は、革新ということばは聞かなくなりましたが、保守は残っています。でも、意味合いが良くわからないので、これももうそろそろ使われなくなると予想します。そもそも高市氏のような白黒はっきりさせてねじ伏せていく人は、昔は保守ではなかったはずで、その支持者を「岩盤保守」と呼ぶのもおかしな話だと思います。地方の農家、中小自営に支持者が多いと見られる石破氏こそ本来の岩盤保守に近いかもしれません。
昔の「保守」「革新」というと、現体制擁護vs革命 というイメージでしたが、今はこれがひっくり返ったように思います。しかし、依然として、金持ちvs貧困者の「階級闘争」は残っていてむしろさらにそれは厳しくなっているので、階級闘争の視点での呼称を考えるべきでしょう。右も左もない、と言うひとがいますが、これは格差の是正を本気でなくそうと思っていない人の発言と思います。階級間での所得再分配の認識なしに施し程度の意識では貧困層をなくすことは決してできないでしょう。この意味では、日本では、れいわがいちばん左で、米国では、トランプがバイデンより、利権団体にしがらみが少ないぶんだけ左かもしれません。
協会のご連絡ありがとうございました。いろいろな得意分野の方々に輪が広がっているようで、今後の進む道が見えるようでうれしいです。