月蝕日和2022年11月09日 22時00分38秒

昨夜の皆既月食は、寝そべって見るのにちょうどよい角度だったので、これ幸いと畳の上にゴロンと横になって、双眼鏡を手にジーッと月の変化を眺めていました。

地球がかぶっている「影の帽子」の中に、じりじりと滑り込む月を眺めていると、月の公転運動や、地球の大きさ、月との距離感が、有無を言わせずダイレクトに伝わってきて、「自分は今、たしかに宇宙の中にいるんだなあ」という実感がありました。

(A. Keith Johnston、『School Atlas of Astronomy』(1855)より月食解説のページ)

普通、星を見上げているときは、たいてい足下の大地のことは意識から消えていますが、月食は地球の存在そのものが天に投影されるという、非常に特異な天体ショーですね。

双眼鏡の視野のうちでは、きれいな茜色に染まった月の周りできらきらと星が輝き、そもそも「満天の星に彩られた満月」というのは、通常あり得ない光景ですから、皆既日食ほどドラマチックではないにしろ、やっぱり相当神秘的な眺めでした。

そして、話題の天王星食。
天王星が月の傍らで、あんなにはっきり見えるとは思わなかったので、これまたすこぶる意外でした。天王星の直径は月のほぼ15倍ですから、それだけの大きさのものが、あんなちっぽけな点に見えるぐらい遠くにあるんだなあ…と、太陽系の大きさを実感しつつ、月の地平線に消えていく天王星の姿を見守りました。

   ★

こうした光景を、すべて寝っ転がって楽しめた…というのが個人的には高ポイントで、先年、奮発してスタビライザー付きの双眼鏡を買って良かったと、壮麗なドラマを前に、卑小な話を持ち出して恐縮ですが、そのことも少なからず嬉しかったです。