旅の記…岡山、鹿児島2014年05月07日 21時22分51秒

先ほど帰宅しました。今回は岡山経由、鹿児島の旅。
観光がメインではありませんでしたが、岡山では市立オリエント美術館を、鹿児島では尚古集成館を訪ねました。

  ★

岡山市立オリエント美術館 http://www.orientmuseum.jp/

先日オリエント世界の天文学の話題にちょっと触れたので、改めてオリエント世界の何たるかを知ろうと思ったのですが、どうも展示が分かりにくかったです。収蔵品自体はなかなか充実しているように思いましたが、なぜか説明がスッと入らない。これはよほど展示が下手なのに違いない…と思いましたが、一巡したところで、自分が順路を逆にたどっていたことが判明。これでは分かりにくくて当然です。もう一度ちゃんと回る時間があればよかったのですが、時間切れで残念でした。


それでも、オリエント世界が「オリエント世界」と一括りにして済ませられるような単純な存在でないことは、たいへんよく分かりました。そこにあるのは、さまざまな民族の興亡の歴史であり、文化の継承もあれば切断もある…という当たり前のことを、再認識しました。

   ★

尚古集成館は、薩摩藩主の別邸だった仙巌園(せんがんえん)に隣接して立つ石積みの博物館。




幕末の薩摩が国力を高め、維新の原動力となった物質的基盤の一つが、藩をあげて近代的工場群の建設に邁進した「集成館事業」であり、その遺構の一部が、今の尚古集成館です。明治新政府のように、お雇い外国人の力を借りることなく、書物の知識と創意工夫のみで、新式機械を作り上げた先人の努力には本当に頭が下がります。

鹿児島は日本の端といえば端ですが、歴代の藩主自身が蘭学趣味に染まっており、科学技術先進地としての顔を持ち、また博物趣味の点でも大いに気を吐いた土地柄です。


今回の旅とは直接関係ありませんが、上はイギリスの宣教医、ベンジャミン・ホブソンが著した自然科学入門書『博物新編』。初版は1855年に上海で刊行され、幕末~明治にかけて、わが国でも盛んに読まれた本です。
特に鹿児島では、明治4年(1871)に「鹿児島県刊行本」というのが独自に出るぐらい、大いに需要があったようです。


手元にある本の旧蔵者、池盛大は伝未詳の人ですが、鹿児島県立図書館の蔵書目録を見たら、この人の筆になる『詳約薬物学筆記 巻ノ1、2』(いずれも年代未詳)という本が載っていました。当時の鹿児島の市井の知識人でもありましょうか。

そういえば、鹿児島県立図書館の前には、「薩摩辞書の碑」というのが立っていて、これは明治2年(1869)に3人の薩摩藩士が刊行した、日本初の活字版・英和辞書を顕彰するもので、これまた日本の近代化に少なからず功があった書物だとか。

   ★

さて、そんな気分に任せて鹿児島で購入した旅のお土産とは。

(次回につづく)