結晶海に漕ぎ出す(2)…結晶とアモルファス2014年08月06日 21時30分01秒

よお、来たぜ。

忙しいところを呼び出して悪いね。

用件はメールで読んだ。でも、俺に結晶のことを聞いてもダメだぜ。お前さん同様、まったくの素人なんだから。

分かっているよ。でも、一人じゃ心細くて。

なんだ、いつも「サイの角の如くひとり歩め」とか何とか言ってるくせに。

いや、面目ない。最近はどうもブロントテリウムをひいきにしててね。
まあ、そんなことより、結晶のことだけど、これが全然分からなくてさ。

全然ってこともないだろ。お前さんのブログを見たら、「結晶っていったら、分子や原子が、ズラリと規則正しく並んだ物質のことでしょ?」って書いてたじゃないか。

まあね。でも、「規則正しく」って言ってもさ、規則正しさにもレベルがあるじゃない。
たとえば、全校集会で生徒が並ぶんでも、ピシーッと前後左右きちんと並ぶ学校もあれば、ヨレヨレっとしている学校もあるよね。たとえピシッとしてても、いったん解散の声がかかれば、徐々にランダムな状態に移行するわけだろ。生徒を分子・原子にたとえると、どの辺から結晶って呼べるんだろう? その辺からして覚束ないんだけど…。


(秩序に乏しい集団)

なるほど。でも、それって生徒同士は、どんなふうでも自由に互いの位置を変えられるっていう前提だろ。分子にその前提が通用するかな?
氷は水の結晶だけど、水が氷になるときは、ある一点を境にスッと変わるぜ。別にゼリー状やグミ状の過程を経て固まるわけじゃない。
物質の世界では、結晶か、そうじゃないかっていうのは、わりとはっきりしてると思うんだ。分子や原子は、別に先生が怖くて、お行儀よくしてるわけじゃない。そうなる条件が整えば、否も応もなく、自ずとピシッとする。それが物質界の掟ってもんさ。

そうか、その間の変化は、連続的っていうよりも、離散的なわけだ。じゃあ、やっぱり結晶は結晶と割り切って考えればいいんだね。

   ★

結晶と呼ばれるものは、すべてその内部で分子・原子が規則正しく並んでいます。言い換えると、分子・原子が規則正しく並んでいるものを結晶と呼ぶわけです。そして、そうでないものは、非晶質(アモルファス)と呼ばれます。

上のふたりは勝手に納得していますが、規則性というのはあくまでも相対的なものだというのは、やっぱり考えておかないといけない点だと思います。

アモルファスの代表であるガラスも、1つの原子に注目すれば、お隣の原子との距離や、相互の位置関係(結合角)は一定であり、まったく無秩序に原子が並んでいるわけではありません。しかし、より大きなスケールで眺めると、ランダムさが目立ち、秩序が失われてしまいます。こういう場合、「短距離秩序・長距離秩序」という言葉を使って、「ガラスに短距離秩序はあるが、長距離秩序はない」という言い方をします。反対に、鉱物のような結晶質のものは、短距離秩序も長距離秩序も両方備えていることになります。

(長距離秩序を備えた畑)

その鉱物結晶にしても、現実の結晶には配列に乱れがあったり、欠損があったりして、理想の結晶とはちょっと違います。それでも、大局的には十分すぎるほど規則的なので、結晶と呼ばれる存在は、やはり伊達に結晶と呼ばれてるわけじゃないな…と思います。

(この調子でダラダラつづく)

コメント

_ S.U ― 2014年08月07日 08時12分10秒

>短距離秩序
 これは興味深い視点ですね。ご説明を読んで何とか理解できたのですが、基本的には、隣同士になる原子の並び方は、量子力学の方程式の離散解で決まっているはずなので、有限個のパターンの中からの選択になると考えればどうでしょうか。

 人間の整列に喩えると、前の人の背中にくっつくか、脇腹にくっつくか、足下にしゃがむか、1人分の間が開くか、とにかく数通りの中からの選択しかなく、その中で、脇腹にくっつく確率が突出して高ければ、みんな脇腹にくっついて人がズラーと斜めに並ぶのだけれども、まれに足下にしゃがむ奴がいてそこは乱れて、またその2~3人後からはまた脇腹の列に復帰するとか、そういう説明はどうでしょう。

_ 玉青 ― 2014年08月07日 13時07分55秒

>確率

結晶の秩序は「確率論的秩序」というわけですね。
一辺の鉱物の面差しに、この世の成り立ちの奥の奥が顔を覗かせているようです。

それにしても、今回の話題は、ものすごくアウェーなので、書いていて全く自信がありません。ウィキペディアを適当に切り張りして(「短距離秩序」という表現も、そんな受け売りの1つです)、その隙間を想像で埋めるような、でたらめ放題なことをしているので、S.Uさんの「天の声」をぜひよろしくお願いいたします。

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