島津、理科の王国(5)2015年11月02日 06時58分42秒

当時の島津の組織はちょっと変わっていて、先日も書いたように、生物系の商品を扱う「標本部」は、製造から販売まで一貫して行う独立部隊でしたが、他方、理化学系の商品は、製造は「工務部」が、在庫管理や営業販売は本店直属の「商品部」や「販売部」が担っていました。

当然のことながら、標本部には自主の気概が漲る一方、他の部からは外様扱いされるようなことがあったんではないか…と、想像します(実際のところは分かりませんが、人間心理として、自ずとそうなるでしょう)。

特に工務部と標本部の間には、明瞭なライバル意識があったのではないか? 
というわけは、下の写真を見て、ざっくばらんな標本部の部屋と比べて、工務部には妙に取り澄ました空気が流れている気がしたからです。両部は互いの気風の違いを、ことさらに強調して見せるようなところがなかったでしょうか?

(左上から時計回りに「工務部事務室」、「工務部応接室」、「製図室」、「研究室」。
中央は「工務部及標本部の表門」)

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そうしたムードの違いは、陳列室にも感じ取れます。
以下は、いくつもの部屋に分散した物理器械の陳列室の光景です。








どうでしょう、同じ理科室の住人でも、瓶詰標本や剥製の群れとは、ちょっと世界が違うと思われないでしょうか。


上は「小学用理科器械」だけを並べた棚です。
小学校用の器材ですから、こちらはあえて「取り澄ました」というほどのこともなく、いかにも愛らしい感じです。

(…と書いていて気づきましたが、どうも上に書いた印象は、かなり個人的なバイアスがかかっていて、私は自分に理解できないものを、何でも「取り澄ましている」ように感じてしまう傾向があるようです。)

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物理器械だけでは片手落ちなので、化学系の商品も挙げておきます。

(薬品及度量衡室)

行儀よく並ぶ薬品壜。壜のサイズやラベルの向きがピシッと揃っているのが、いかにも几帳面な感じです。手前のケース群は、箱入りの精密ばかりです。

(器械陳列室(化学器械))

窓からの光で、透明なガラスが明るく輝くケミストリーの部屋。

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掲出した写真は、アルバムのごく一部にすぎませんが、これらの画像からも、明治の島津製作所の雰囲気と、当時の理科教育の一端を伺うことができます。

(この項おわり)