究極のコレクション2019年01月23日 14時26分49秒

新年から張り切って記事を書いてきましたが、仕事が突沸するとどうしようもありません。人間が生きていくことは辛く、大変なことです。

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さて、世にコレクターと称される人は多く、そのコレクションの対象もさまざまです。
その中で、究極と言えるのは、なんといっても「宇宙のコレクション」でしょう。より正確に言えば「宇宙の構成材料のコレクション」、すなわち元素のコレクションです。こんなにファンダメンタルな蒐集はありません。何せ、他のコレクションは全てここに由来するのですから。

元素のコレクションとは何か?
たとえば、科学雑誌「ニュートン」のバックナンバーを引っくり返すと、こんな広告が載っています。

(2017年10月号)

常温常圧で恒常性があり、放射能や毒性がなく、手元に置いても安全なもの…という制限はありますが、そうした条件を満たす元素単体を瓶詰めにして、ずらっと並べて楽しもうという趣旨の商品です(お値段54万円というのが衝撃)。

たぶん関心のない人には、どこが面白いのか、さっぱり分からない趣向だろうと思うんですが、世間には元素コレクターという存在が確かにいて、みなコレクションの形成にせっせと余念がありません。(その証拠に、英語版Wikipediaには、「Element collecting」の項目がしっかりあります。)

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私自身は、別に元素マニアではないのですが、理科趣味に絡む、この「究極のコレクション」に食指が動くのは当然で、何十万円も支払う力はありませんが、もうちょっとリーズナブルな品がないかなあ…と、しばらく画策を続けました。

その結果、手元に呼び寄せたのがこれです。


黒いレザー貼りの箱をぱかっと開けると、元素サンプルがずらり。


箱の中には全50種がセットされており、下に出てくる追加16種セットと合わせて、合計66種の標本が、手元にあります。残念ながら、周期表とパラレルな配列にはなっていませんが、それでも宇宙の部品を一望するのは、辛い人生をいっとき忘れ、神様になったような気分がして、なかなか愉快です。




おなじみの金・銀・銅



ささやかな線条状プラチナに、リボン状のマグネシウム


妖しく輝くバナジウム(ただし青緑は酸化被膜の色)に…


真っ黒いのは、もちろん炭素です。


さらにこちらは、取り扱い注意の元素16種セット。
その多くは水と反応するのを防ぐため、油浸されています。


比重が小さいため、金属のくせに瓶の中でぷかぷか浮いているリチウム


20世紀最初の年、1901年に単離された、ヨーロッパを名に負うユウロピウム

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元素の中には、ばんばん放射線を出して危なかったり、目に見えないガス体だったりして、こんな風に眺めて楽しむことのできない元素もたくさんあるので、真の神様への道のりはなかなか遠いです。

でも、仮にそれらを全て手元に揃えることができたとしても、通常の物質以外に、ダークマターとか、ダークエネルギーとか、この宇宙には未知の存在がいろいろあるので、人類の「宇宙のコレクション」には、欠けたピースが依然としてたくさんあります。まあ、だからこそ人類の夢も当分続くわけで、それはそれで良いことだと思います。