日本の星座早見盤史に関するメモ(7)…ここまでの整理2020年06月16日 06時59分06秒

さて、時計を巻き戻して、ちょっと前に「日本の星座早見盤史に関するメモ」というのを書いていました。6回まで書いたところで放置していましたが、あれだけだといかにも中途半端なので、もう少し書き足します。

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まず、これまでのところで分かっている事実を確認しておきます。

①製品版に限っていうと、戦前の星座早見盤は、三省堂の独占状態にあった。
②戦後は、複数のメーカーが星座早見盤の製作・販売を手掛けるようになった。

ここまでは確実です。さらに、戦後の状況として、

③昭和50年(1975年)頃の主要メーカーとしては、三省堂渡辺教具、恒星社、地人書館、大和科学教材、名古屋科学館、キング商会を挙げることができる。太字は複数の資料に重複して挙がっているメーカー。また、赤字は複数の製品を出していた会社。)

これもはっきり分かっています(ただし、三省堂と渡辺教具を除く各製品の詳細や発売年は不明)。

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さらに、ぼんやりしているけれども、おぼろげに分かっていることも挙げます。
ここで、以前紹介した、昭和30年(1955年)発行の学校教材カタログに、もう一度登場してもらいます。上記の①と③をつなぐ時代の証人です。
 
(画像再掲)

ここから分かることとして、

④昭和30年当時、学校向けに推奨されていた星座早見盤には3種類あり、サイズと価格の異なる3つのグレード、(A)セルロイド製盤径12cm(60円)、(B)金属製盤径17cm(80円)、(C)経緯線入20cm渡辺式(180円)があった。

これはカタログから直接読み取れる事実です。
ただし、各製品の細部は非常にぼんやりしています。

⑤(C)の製品は、メーカー名から渡辺教具製と推測され、直径20cmという盤のサイズも、後の同社の主力製品(「お椀型」)と同一である。しかし、同社WEBサイトは、自社の星座早見盤発売を1960年としており、そこに謎が残る。

また、

⑥(A)の製品は、メーカー名も商品名も不明だが、先に寄せられたtoshiさんのコメント【LINK】から、その有力候補として、ヘンミ計算尺(株)製の「星座早見盤」である可能性が浮上し、さらにネット情報によれば、同社は少なくとも昭和23年(1948)には星座早見を販売していた。

…という事実も判明しています。
三省堂、渡辺教具に続く、第3の有力メーカーの登場です。

⑦残る(B)については、カタログに写真が載っており、「北半球 全天星座」という商品名を読み取ることもできるが、メーカー名は不明。

順当にいけば、この(B)は三省堂製であるべきところです(同時代の雄だった三省堂製が載ってないのは、逆に不自然です)。しかし、後ほど見るように、「金属製盤径17cm」という形状や、「北半球 全天星座」という名称に合致する製品は、同社のラインナップに見当たらず、この点は今のところ完全に謎です。

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わずか6~70年前のことですが、戦後の星座早見盤の初期進化の歴史は、一種のミッシングリンクで、今後の解明が強く待たれます。

まずはモノを発掘すること。そして土器の編年作業のように、いろいろな周辺情報と突合して、発掘したモノたちから、整合した矛盾のない歴史を編み上げること―。言うは易く、行うは難きことですが、今必要なのはそうした作業です。それを自分がやれるか…というと、全然自信はないですが、今後、気にかけていきたいです。

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まずは手近なところから、その後いくつか手にしたモノを元に、メモ書きを続けます。

(この項つづく)