マイケル・J・クロウ著 『地球外生命論争』 を読む2006年11月07日 22時52分03秒

(上掲書、第3巻表紙)

一昨日触れた、フラマリオン著・ゴア訳の『一般天文学』について知ったのは、マイケル・J・クロウの『地球外生命論争』(鼓澄治ほか訳、工作舎、2001)においてでした。


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 フラマリオンの最も成功した著作は、彼の『一般天文学』であり、それは、英語に翻訳した天文学者J・E・ゴアによれば、「数年の間に、…10万部以上が売れ、多分、科学的著作の中では、他に匹敵するものがない売れ行きであったろう」。

〔中略〕J・E・ゴアによる『一般天文学』の注釈付き翻訳の一文は、フラマリオンの大胆で陽気なスタイルと、それが翻訳者に提示した問題を、次のように要約している。

 「われわれはすでに空に、断続的な閃光を放ちながら、燃え上がり、死に瀕し消滅へと向かっている25の星を見た。[「束の間の星」に関して認証されている事例数は、25より少ない―J・E・ゴア]。われわれの祖先によって観測された明るい星は、すでに、宇宙の地図から消滅してしまっている。[明るい星が、実際に消滅したかどうかは、非常に疑わしい―J・E・ゴア]。非常に多くの赤色星が、消滅の時期にさしかかっている。[赤色星が本当に冷却しつつあるかどうかは、論争中である―J・E・ゴア]。」

 このような文面から、フラマリオンの次の大著『星々と宇宙の名所』(1882)を評したある論評家が、なぜ彼を「欠点と言っていいほど、情熱的で想像的」だと描写したかが読み取れる出あろう。 (邦訳 671-672頁)

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上にあるとおり、ゴアのこの訳本は妙に註釈が多く、そこに半世紀の間に成し遂げられた天文学の進歩と、フラマリオンの大胆なスタイルが伺える…というのが、興味を惹かれた点でした。

本文を読み、註を見れば、いわば「1粒で2度おいしい」効果が期待できるのではないか、と思ったわけです。まあ、結局積ん読のままなので、空しい期待だったわけですが…。

それはともかく、この『地球外生命論争』はとても読みごたえがあります。フラマリオンはもとより、天文学史の本流というよりは、その周縁に位置する人々(しかし当時は、それなりに影響力のあった人、というのがミソ)が大量に登場してくるので、天文趣味の歴史を振り返る上では、大層参考になる本です。全3巻というボリュームに加え、広範な思想史をたどる硬派な内容からも、決して読みやすくはありませんが。

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