鉱石考・余談2014年07月25日 06時57分41秒

昨日の記事は、読み返してみると、結論のみならず、趣旨そのものがはっきりしませんが(いつものことです)、あの後思ったのは、「鉱物」と「岩石」が、物そのものの性質に基づいて定義されているのに対し、「鉱石」は人間活動との関係を定義に含めてしまったため、初手から自然科学(物質科学)とは縁遠い、むしろ人文科学的概念になっているなあ…ということでした。そもそも「鉱石」は、「鉱物/岩石」と並び立つ用語ではないですね。

「鉱物」と「鉱石」の関係は、ちょうど「昆虫」と「益虫」の関係と同じです。
「鉱石」と「益虫」は、そこに人間の価値判断が含まれているので、目の前にある石や虫が、最終的に「鉱石/益虫」であるかどうかを決定するのは、科学者ではなく、むしろ裁判官の仕事になるのでしょう。(個々人がそれに納得するかどうかは、また別問題ですが。)


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定義というのはいろいろありうるもので、それが学問の対象であれば、学問的定義が尊重されるのは当然としても、それが唯一絶対というものではなく、たとえば世間には「法律的定義」なんていうのもあります。

昨日引用した『原色鉱石図鑑』に教えてもらったのですが、「岩石」と「鉱物」にも、ちゃんと法律的定義があって、岩石は「採石法」が、鉱物は「鉱業法」が定めているのだそうです。

■採石法
第二条  この法律において「岩石」とは、花こう岩、せん緑岩、はんれい岩、かんらん岩、はん岩、ひん岩、輝緑岩、粗面岩、安山岩、玄武岩、れき岩、砂岩、けつ岩、粘板岩、凝灰岩、片麻岩、じや紋岩、結晶片岩、ベントナイト、酸性白土、けいそう土、陶石、雲母及びひる石をいう。

■鉱業法
第三条  この条以下において「鉱物」とは、金鉱、銀鉱、銅鉱、鉛鉱、そう鉛鉱、すず鉱、アンチモニー鉱、水銀鉱、亜鉛鉱、鉄鉱、硫化鉄鉱、クローム鉄鉱、マンガン鉱、タングステン鉱、モリブデン鉱、ひ鉱、ニツケル鉱、コバルト鉱、ウラン鉱、トリウム鉱、りん鉱、黒鉛、石炭、亜炭、石油、アスフアルト、可燃性天然ガス、硫黄、石こう、重晶石、明ばん石、ほたる石、石綿、石灰石、ドロマイト、けい石、長石、ろう石、滑石、耐火粘土(ゼーゲルコーン番号三十一以上の耐火度を有するものに限る。以下同じ。)及び砂鉱(砂金、砂鉄、砂すずその他ちゆう積鉱床をなす金属鉱をいう。以下同じ。)をいう。
2  前項の鉱物の廃鉱又は鉱さいであつて、土地と附合しているものは、鉱物とみなす。


まあ、これは法律の適用対象を列記しただけなので、「岩石」や「鉱物」の語釈には全然なっていませんが、言葉の意味が、文脈によって変わることは感じていただけるでしょう。

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よく見たら、このブログのカテゴリーも「化石・鉱石・地質」になっていますね。。。