天界の美、書物の美(1)2016年02月22日 22時18分14秒

ブログも長く続けていると、いろいろ過去のしがらみが蓄積してくるもので、昔、「そのうち○○について紹介します」と言ったなり、放りっぱなしにしていた記憶がふと甦って、何となく落ち着かない気分になることも多いです。

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美しい天文古書のことを考えていて、ちょうど2年前に、自分が「この本は将来『美しい天文古書の世界』を紹介する際に、もっと詳しく紹介します。それだけの価値のある本です」…というようなことを書き付けていたのを思い出しました。

それはイギリスの古い本から、虹の挿絵を引用した際に記したことです。

■虹のかけら(6)…群れなす虹
 http://mononoke.asablo.jp/blog/2014/02/13/

そこに登場したのが、この本。

(画像再掲)

(タイトルページ)

■Charles F. Blunt(著)
 The Beauty of the Heavens.『天界の美』
 David Bogue (London), 1849(第4版)
 本文103p. + 図版104葉

(三方をマーブル染めにした、凝った装幀)

現在市場に流通している天文古書は、たいてい19世紀の第4四半期以降のものです。
その頃には、天文趣味が面的に拡大し、あちこちに天文愛好家のクラブが出来て、関連書籍もぐっと増えて…という状況になるので、いきおいその頃の本が、今も市場にたくさん出回っているわけです。

でも、19世紀前半の世界においては、天体望遠鏡も、天文趣味も、ごく一部の人のものでしたし、本もなかなか貴重品で、カラー図版を入れようと思ったら手彩色に頼らざるを得なかったので、量産はできませんでした。

そんな時代にあって、104枚もの手彩色石版画を収めたこの本は、19世紀前半における代表的な天文ビジュアル本であり、1849年の時点で4版を重ねていたということは、絶対的な発行部数は少ないにせよ、当時かなり人気を博した本なのでしょう。

…と書いたところで、ちょっと一呼吸おいて、肝心の挿絵は次回以降に。

(この項つづく)