タルホ的なるもの…神戸のBARへ2016年05月28日 15時05分46秒

タルホ界の散歩も、漫然と界隈を徘徊するだけなら無限に続くでしょうが、他の話題にも進みたいですし、ぼつぼつ切り上げようと思います。

今日は、現実の地上世界に戻り、足穂氏がふらりと立ち寄るかもしれない、神戸のバーを訪ねることにします。

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神戸の「外人バー」と聞くと、昔を知る人にとってはかなり恐ろしい場所で、いわゆる「不良外人」が群れて、よこしまな行為を平然と行った場所…というイメージのようです。

神戸の歴史にうといのですが、しかし、ここでいう「外人バー」は、戦後闇市の時代に生まれた“魔所”で、さらに遡って戦前の「外国人向けバー」になると、名前は似ていても、その実態は随分異なるものじゃないかと思いますが、どんなものでしょう。この辺は、事情通のご説明を待ちます。

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さて、そんな戦前の神戸のバーのビジネスカードを見つけました。


いずれも外国人向けに営業していた店らしいので、こういうエフェメラは、日本にあまり残っていなくて、かえって外国の市にひょいと出たりします。これを売ってくれた人の国籍も、アメリカ、ドイツ、イギリスとさまざまで、そこに神戸の性格がはからずも出ています。


元町1丁目で、チャーリー・ヘンケルマン・ジュニアが営んでいた「チャーレー・ジュニア・バー」。

姓からすると、オーナーはドイツ系でしょうか。
神戸にはいろんな人が、いろんな事情で住んでいたので、日本生れの青い目の酒舗オーナーがいても、ちっとも不思議ではありませんが、それにしても彼はいったい戦中・戦後をどのように過ごしたのか。(ここで、何となく手塚治虫の名作『アドルフに告ぐ』を思い出します。)


元町3丁目の「セントラルバー」。

どうかセントラルバーへ忘れずお立ち寄りください。
きわめてお安く、最高の品質をご提供。
最高の酒!!!

…と、びっくりマークが3つも付いていますが、その言語感覚にはちょっと独特のものがあって、ニュアンスを出しにくいです。ピジョン・イングリッシュとまでは言いませんが、この辺が戦前の国際港の雰囲気なのかもしれません。

それは生田神社そばの「オ、ケ、バー」になると、いっそう著しく、


美しく清潔な女の子たちが最高のサービスを。
すべて真っ当な商い。
いんちきなし。

…と言われて「なるほど、こりゃいい」と思う人はいないはずで、とっさに身構えると思うのですが、でもそこにキワモノっぽい面白さを感じて、かえって立ち寄ってみる気になるのかもしれません。

さらに下山手通の「横浜亭」になると、私の英語力ではまったく理解することも、訳すこともできません。


最低の酒と料理」、そして「望みうる限り最も醜い女給」が自慢のこの店で、足穂氏と酒杯を挙げるのは、何だか素敵な思いつきのようでもありますが、しかしこの店の亭主が根っからの正直者だったら…と思うと、やっぱりちょっと躊躇するものがあります。

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戦前の神戸。やっぱり不思議な街です。
そして、夜毎に何か起きそうな街です。