オークションという魔所2024年02月01日 18時35分02秒

個人的印象ですが、最近のeBayはめっきり「Place bid」が減って、「Buy It Now」ばかりになってませんか。オークションサイトの看板はそのままながら、実態は販売価格の明示されたショッピングモール化している感じがします。


これは精神衛生にとって非常に良いことです。
オークションというのは、駆け引きを伴うギャンブル性の強い行為なので、心をむしばむ面があります。つまり、そこで商われている商品そのものよりも、入札して競り落とすという行為に淫する恐れがあるのです。脳内物質が多量に放出されるあの感覚には、明らかに依存性があります。

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そんなことを思ったのは、先日久しぶりに入札する機会があったからです。

まあ、それほど執着してないモノだったら、そんなに心も乱れないわけですが、今回は絶対に欲しいと思った品で、しかも全世界で40人以上が Watchlist に入れているという人気の品だったので、非常に厳しい戦いが予想されました。いやがうえにも緊張が高まるわけです。オークション終了5分前ともなれば、文字通り全身がゾワゾワし、1分前には動悸とともに目の前がチカチカしてくる始末です。

こういうときの入札のタイミングは明白で、入札終了の数秒前に限られます。それより前だとカウンタービッドが入って競り負けるし、それより後だとシステムや回線の関係でタイムアウトの恐れがあります。まさに必死剣鳥刺しというか、一撃必殺の構えです。

(藤沢周平・原作の「必死剣 鳥刺し」(東映、2010)のワンシーン)

その息詰まるドラマの結末は…?
もちろん落札したのは私です(しかも、心に決めた金額のだいぶ手前で)。これは完全に私の気合勝ちで…というようなことを誇ること自体、だいぶ心をむしばまれている証拠で、落札できて嬉しい反面、非常に危険なものを感じたのでした。

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しかも、話はこれで終わりません。
無事落札できて枕を高くして眠りについた翌日、「オーダーキャンセル」のメールが届いたときの私の気持ちを、どうかご想像いただきたいのです。

「えっ!なぜ?」と思いつつ文面に目を通したら、「海外の入札者には事前に送料確認をお願いしていましたが、あなたはそれを怠りました。それに日本にこの品を送るには、ややこしい手続きが必要なので、申し訳ありませんが…」と書いてありました。

嗚呼、何としたことでしょう。そう言われれば、たしかに商品説明の中にその旨の記述がありました。これは完全に私の不注意なので、弁解の余地はありません。文字通り天を仰いで茫然自失。

やっぱりオークションには魔物が住んでいるのです。
君子は進んでこれを遠ざけるべきです。