飛べ、北極星を友として…巨大飛行船の時代2026年05月18日 19時01分38秒

記事の間隔が空くと、「久しぶりだから、しっかり中身のあるものにしないと…」というプレッシャーを感じることがあります。もちろん気にするのは当人だけで、他の人にとってはどうでもいいことでしょうし、そもそもこのブログは人の目に触れることがほとんどないので、まったく無用の気遣いだとは思います。「されど…」というのが人情の機微。

…と、自問自答したあとで、ごくあっさり書きたいと思います。

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最近の買い物の中では出色の品。


飛行船のレリーフです。9.2×14.8cmと、ちょっと細長の葉書サイズ。
表面に人工的に酸化被膜をつけた、いわゆる黒染鋳鉄製。


飛行船そのものも、もちろんいいです。
そして、それが北斗とポラリスの輝く脇を悠然と進む姿はさらにいいです。
北極星が表現されているのは、当時の飛行船は星を目当てに進路を定める「天測航法」を使っていたことを象徴的に示しているのでしょう。


裏面には「Weltflug 1929 Graf Zeppelin」の文字。
すなわちこの金属プレートは、あの「ツェッペリン伯号」が1929年(昭和4)に世界一周飛行を成し遂げたことを記念する目的で作られたものなのでした。

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ツェッペリン伯号は全長約237メートル、1928年に建造された当時は、世界最大の飛行船でした。型番は「LZ 127」。ちなみに悲劇の爆発事故(1937年)を起こした「ヒンデンブルク号」は「LZ 129」で、その後続機にあたります。

1929年8月8日、米ニュージャージーを出発したツェッペリン伯号は、まず大西洋をひとっ飛びして故国ドイツへと向かいます。そこからシベリアを横断して、8月19日に、東京上空にその巨大な姿を現し、茨城県の霞ヶ浦海軍基地に着陸。8月23日まで日本で熱狂的な歓迎を受けたあと、太平洋横断の旅に出発し、ロサンゼルス経由でニュージャージーのレイクハースト海軍航空基地に戻ったのは、8月29日のことでした。21日間に及ぶ世界一周の旅でした。

巨大飛行船が空の王者だった時代。
もちろん現実世界の話なんですが、なんだか夢まぼろしのような気もします。

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上の写真の再掲ですが、このレリーフの原型を制作したのは、ここに名前の見えるベルリンの彫刻家、エーベルハルト・エンケ(Eberhard Encke、1881-1936)


そして鋳造にあたったのは、おもて面の右下にそのマークが見える、「ラウフハンマー美術鋳造所」です。ここは1725年創業という、ドイツ有数の伝統をほこる鋳造所で、手掛けるのはもっぱら美術工芸品の由。


さらに左下に見えるのは、白山羊をかたどったツェッペリン伯家の紋章で、実物は下のような絵柄だそうです。


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ところで、今回記事を書くまで見落としていましたが、レリーフの下部に見える巨大な弧。これってよく考えたら、大地であり、巨大な地球の一部を表現したものですね。そう思って見なおすと、全体が一層立体的かつリアルに迫ってきて、ツェッペリン伯号の偉容が増すように感じられます。