実験の時間(1)2012年08月22日 21時03分13秒

「実験する少年少女たち」をテーマに、古絵葉書を眺めていきます。
まずは、いちばん最近届いた絵葉書から。


東京工業大学の前身、東京高等工業学校の実験室の光景です。
同校は明治14年(1881)に創設され、この絵葉書には「創立40周年記念」のスタンプが押されていますから、大正10年(1921)に発行されたもののようです。当時はまだ隅田川沿いの蔵前にありましたが、1923年9月に起こった関東大震災で、壊滅的打撃を受け、現在の目黒区大岡山に移転しました。

キャプションには「電気化学科実験室ノ一部」とありますが、電気っぽい装置は特に見えません。各種のフラスコ、ピペット、漏斗、試験管、試薬ビン…どうやら、ここは純然たる化学実験の場のようです。大正時代の化学実験室のありさまがよく分かる一枚。

   ★

ところで、この絵葉書、よく見ると構図が変です。ここで学んだのは18,9からはたち前後の若者ですから、写っているのは、少年というよりは青年ですが、どうも彼らの配置が不自然です。左端の学生だけは、りりしい表情で実験に励んでいますが、あとは

こちらを意味ありげにじっと見ていたり、

まるでわざとのように顔を隠したり。

写真師の指示が不徹底だったせいかもしれませんが、画面に偶発的なシュールさが漂ってしまっています。