ジョバンニが見た世界…大きな星座の図(2)2013年02月04日 20時58分41秒

「大きな星座の図」の「大きな」とは、どれぐらいの大きさを言うのか。
あまり意味のある問いではないかもしれませんが、話の流れからちょっと調べてみました。

前提として、ジョバンニが見たのは、空一面の星座を1枚の紙に描きこんだ集合星図ですから、おそらくは天の北極/南極を中心とする円形星図か、メルカトル式の星図でしょう。実際の作例としては前者のほうが圧倒的に多いので、ここでは主に円形星図の直径で考えることにします。

参照したのは、デボラ・J.ワーナーという人が著した、『The Sky Explored:Celsetial Cartgraphy 1500-1800』 です。これは過去に出版された星図総覧のような本で、データも豊富なので、それをざっと見て、大きそうな星図を選り出してみました。

その中で最大のものは、何と直径192センチ
フランスのド・ラカイユ(Nicolas Louis de Lacaille 1713-1762)が、1754~5年にかけて作ったものです。

ただし、これは一般向けに出版されたものではありません。彼が南アフリカの喜望峰で南天観測を行った成果を、王立科学アカデミーで発表する際に、プレゼン用に作ったもので、現在はパリ天文台の展示ホールに掲げられているそうです。

(うまくスキャンできませんでした)

パリ天文台にあるという現物の画像を探したのですが、見つけられなかったので、上は参考図です。ラカイユ自らが原図に手を入れて、1756年に公刊した図を、さらに1776年に転載したもの。パリで出版された『フラムスティード星図(第2版)』の付図として収められています。(出典:『フラムスチード天球図譜』、恒星社厚生閣)

というわけで、これはまったくの例外。これほど大きな星図は、これ以外にワーナーの本には載っていません。

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では、それに次ぐ大きさはといえば、イギリスのラム(Francis Lamb)が1679年に作った天球図で、直径は30インチ(約75センチ)。ラカイユの図の半分以下ですが、それでもずいぶん大きなものです。そのため、図↓のように、紙を4枚接いであります。これは南天図ですが、同じ大きさの北天図もあります。

(これまた画像を見つけられなかったので、ワーナーの本よりスキャン)

以下、ボーデ(Johann Elert Bode 1747-1826)やカッシーニ(Gian Domenico Cassini 1625-1712)等が手がけた、直径60センチの星図が3点、次いで、直径50センチ台の星図が5点ほど、ワーナーの本には記載されています。以上がいわば大きさ十傑。

要するに、古星図の世界では、直径50センチもあれば「巨大な星図」と呼んで差し支えなく、40センチ程度でも十分「大きな星図」と呼ばれる資格はあるといえます。

もちろん、ジョバンニがそういう星図界の事情に通じていたわけではないでしょうが、現実を踏まえれば、時計屋の店先に飾られていた星図は、「午後の授業」で使われた掛図ほど大きくなくても良い…というのが、ここでの一応の結論です。

(この項つづく)