ジョバンニが見た世界…大きな星座の図(5)2013年02月15日 22時00分56秒

さて、ぼちぼちジョバンニの記事を再開せねばなりませんが、今回の星座図の話題は、けっこう書くのに苦労しています。というのは、あまり深く考えずに書き出したため、途中でいろいろほころびが生じてしまったからです。

たとえば、「ジョバンニが見たのは、直径4~50cmクラスの円形星図、それも北天・南天を並べて描いたものだろう」と、もっともらしく書きましたが、実は記事を書く前に思い浮べていたのは、全然別のタイプの星図で、その写真も用意しておいたのですが、でも、いったん記事がそっちの方向に進みだすと、いまさら軌道修正もきかなくて、この先どうすればいいのか、途方に暮れています。

うーん…どうしようかなあ…と迷いつつ、時間稼ぎに、ふと思いついたことを書きます。

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そもそもこの時計屋の主人は、いったいどんな人物だったのか?

以前も書いたように、『銀河鉄道の夜』の舞台が1912年と仮定すると、19世紀の記憶もまだ生々しい時期であり、「古星図」の定義や、その相場も現在とはずいぶん違うはずですが、それにしたって古星図が高い買い物であることに変わりはないでしょう。


古星図のまとまった書誌として最初のものは、1933年にイギリスで出た、Basil Brownの『Astronomical Atlases, Maps and Charts』という本だとされます。それ以前、「銀鉄」の時代には、古星図についての情報は、一部の碩学、古書肆、それに熱心なコレクターが独占していたと思われ、そんな時代に、古い天文学の香気に惹かれ、せっせと古い星図や望遠鏡を買いこんだ店主の心意気に、私は深く感ずるものがあります。

この店主、作品の表には一切出てきませんが、実はエライ人なんじゃないでしょうか。

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…という時間稼ぎをしても間がもたないので、話を前に進めて、手元で時計屋のショーウィンドウを再現する方法をいくつか(無理やり)考えてみました。

その1つが、セラリウスの『大宇宙の調和 Harmonia Macrocosmica』(初版1660)を持ち出すことです。もちろん、原著ではなくファクシミリ版。南北両天を同時に、というのは難しいですが、適当なページをはらりと開いて立てておけば、雰囲気は出るかも…と考えました。


この大判の美しい星図帳は、現在すべての画像をオンラインで見られますが(例えばhttp://diglit.ub.uni-heidelberg.de/diglit/cellarius1661)、紙でペラペラやりたい人のために、ファクシミリ版が作られています。

そのファクシミリ版も、過去に何度か作られていますが、いちばん新しいのが2006年にベルリンのCoron-Kindler社から出たものです。定価は1,698ユーロを謳っていますが、なぜか古書市場に新本が流れていて、その実売価格は200~300ユーロ。


表紙の高さは52センチ、幅は33センチですから、新聞紙をやや細身にしたぐらいの大きさがあります。実際手に取ると、「巨大」といってもいい本です。

(この項つづく)