大きなたまご、小さなたまご2015年12月05日 08時59分12秒

鳥卵界の両横綱、ダチョウとエミューの卵と、「普通の卵」を比べると、こんなに違います。


下の缶入りの卵はイギリス製のレプリカで、本物ではありませんが、いずれも実際の鳥の卵をモデルにしたものです。イングランドの緑あふれる田園地帯で、コツコツ卵作りに励んでいる作者は、「50年以上の経験と資料に基づき制作された正確なレプリカ」と、胸を張ります。


大き目の107番はヤドリギツグミ、その隣の濃い青緑をした159番はウタツグミ、小さな空色の072番はヨーロッパカヤクグリ(イワヒバリ科)、その他、ホシムクドリカワラヒワゴジュウカラヨーロッパコマドリ等々、いずれも向うでは身近な小鳥の卵です。

そして、缶全体の直径が10.5cmですから、いかにダチョウやエミューの卵が大きく、小鳥たちの卵が小さいかが分かります。

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でも、しばらく見ていて、「待てよ…」と思いました。
たしかにダチョウやエミューの卵は巨大ですが、親鳥の体格差を考慮したらどうでしょう?むしろ小鳥たちの卵のほうが「巨大」と言えるんじゃないでしょうか?

パパッと検索すると、はたしてそのとおりで、下のページによれば、一般的に「重い鳥ほど体重の割りに軽い卵を産む」傾向があるのだそうです。


データを一部引かせていただくと、ミソサザイは体重比で7分の1、ヒヨドリは15分の1、カラスや鶏は30分の1、そしてダチョウに至っては70分の1に過ぎません(ただし、キーウィはずんぐりと大きめの鳥ですが、体重の4分の1もある巨卵を生むとのこと)。

小さい鳥にとって卵を産むことは、本当に大変なことだなあ…と、再び感じ入ったのでした。

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そして、この傾向をさらに大きい方に延長すると、見上げるような恐竜たちも、その卵は意外に小さいのだそうです。

■「ほんとう」の恐竜の卵(林原自然科学博物館)
 http://www.hayashibaramuseum.jp/shinka/023/index.html

恐竜の卵は、最大でもバレーボールぐらいだといいますから、ダチョウの卵と大して変わりません。これは、子ども恐竜が卵の中で育ち、孵化するためには、殻の厚さが物理的に一定以上になることができず、卵全体の大きさも自ずと制限されるためだそうです。

そんなわけで、ダチョウの卵は恐竜よりも相対的に「巨大」で、ハチドリの卵はダチョウの卵よりもいっそう「巨大」といえるわけです。

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この世に顕微鏡サイズの鳥がいれば、必ずや自分の体重以上の卵を産むでしょう。
そして、その雛は親鳥よりも大きく、成長するにつれて小さくなるはずです。
それが科学的帰結というものです。

…というのはもちろん冗談ですが、卵一つとっても、いろいろ考える楽しみはあるものです。