光はかく振る舞う2015年12月22日 19時59分25秒

昨日の温度計の隣にあった謎めいた実験装置も、ついでに写真に撮ってみました。

(埃だらけでお見苦しいので、以下、画像は小さめ)

手前が対物側、奥が接眼部で、何やら覗きカラクリめいた装置です。


こうして角度を変えると、黒いボックスの中にガラス塊が配置されているのが見えます。


上から見たところ。右が対物側、左が接眼部です。
ご覧のとおり、ガラス塊は2個のプリズムで、対物側から入射した光がカクカク曲って接眼部に達し、向うの景色を覗けるというもの。要は、双眼鏡への応用でポピュラーな「ポロプリズム」の原理を説明するための、デモ用実験装置なのでした。


メーカーは東京麹町の大久保器械店。
文字が右書きですから、当然この装置は戦前のものでしょう。

この銘板とといい、真鍮製の支柱といい、「古風」の一語に尽きますが、単純な装置のわりに全体に何となく大仰な感じがあって、この大仰さこそ、昔の理科(と理科室)がまとっていたものだ…という気がします。
そして眺めているうちに、ふと理科室の埃くさい暗幕の匂いを思い出したりもします。

生徒たちは最初、明るい所で遠くの景色を覗いて歓声を上げ、次いで暗くした部屋で、実験用光源から射出された光線が屈曲する様を興味深く観察し、最後に先生の話を神妙に聞く…というふうに授業は進んだのでしょう。

この装置が口をきけたら、きっといろいろな思い出を語って聞かせてくれるのになあ…と、これはいつも古い物を前にしたとき思うことです。