透かし見る空…名月によせて(その2)2020年10月02日 19時44分44秒

今日の絵葉書は、禿頭よりかは、いくぶん情緒に富んでいます。
(禿頭にもある種の情緒はあるでしょうが、それはやや特殊な情緒に属すると思います。)


絵柄はフランスで愛唱される「月の光に(Au clair de la lune)」を題材としたもの。
この曲については、やっぱり以前、記事で取り上げたことがあります(どうもマンネリ化が著しいですね)。

月明かりの道化師

恋のロマンスを仲立ちするピエロと、下界の人間ドラマを見下ろす月。
ピエロそのものが、いわば月光派のキャラクターですし、全体が月明かりの下で進行するストーリーには、一種独特のムードがあります。言うなれば「夜の香り」。
絵葉書は、その歌詞を載せ、主人公である男とピエロのやりとりの場面を描きます。


それを光にかざせば、ろうそくが灯り、月が皓々と輝きだします。

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昨夜は雨雲に覆われて月が見えなかった土地もあった由。
でも、眼前の景色を、心の灯にかざして見れば、分厚い雲をすかして、鏡のような月がきっと見えたでしょう。少なくとも心の目には見えたはずです。

余滴2020年10月02日 19時47分21秒

日本学術会議の会員人事をめぐる問題。

その騒ぎを聞いて、日本学術会議法というのを、今回初めて読みました。
法律の常として、さらに「施行令」というのがあり、また当然のごとく会則」やら細則」やら、いろいろな決め事があって、それは同会議のサイトに、一括して載っています。(以上の4つは一通り目を通しました。いずれもそう長い文書ではありません)。


肝心の会員の任命については、その第7条「会員は、第17条の規定による推薦〔=学術会議の推薦〕に基づいて、内閣総理大臣が任命する。」とあって、これだけ読むと、たしかに会員の任命権は首相にあると読めます。

しかし、ここでいう「任命権」には、「選任権」や「任権」が含まれていないことには十分注意が必要です(首相は学術会議側から申し出がない限り、会員を辞めさせることはできないことになっています)。

そして、任命の根拠は、唯一「学術会議から推薦があったという事実」に限られ、たとえば「推薦のあった者の中から、○○を考慮して内閣総理大臣が任命する」…というような建付けにはなっていません。つまり、第7条は首相の裁量を強調したものではなく、「学術会議の推薦の無い者を、首相が勝手に会員に任命することはできない」という、むしろその裁量権に大きな制限を課した条文です。

学術会議が「優れた研究又は業績がある科学者」として推薦した人(第17条)を、首相が蹴るというのは、独立して職務を行うとされている(第3条)学術会議の独立性を脅かすものであり、「不当な人事介入」と呼ばざるを得ない行為です。

…というようなことは、すでに多くの人が述べているので、屋上屋を架す必要はありません。それでも事実を確認しておくことは大事ですから、念のため、根拠法を一瞥してみました。

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本件について、私の態度は100%明瞭で、菅内閣に対して、きっぱりと抗議の意を表明します。そこに何のためらいもありません。

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ただ、ここで私の心にかすかに引っ掛かっていることがあります。

もし将来、私が支持するリベラル政権が成立したとして、その政権が学術会議の会員を任命するに際して、極右的であったり、全体主義的であったり、差別主義的であったりする人を拒否したら、私はそれに対してどういう態度をとるだろうか…という問題がそれです。

結局、今回の件もいろいろな議論の層がありうるのですが、昨日、寝床の中で自分なりにボンヤリ思いついたことがあります。頭を再度整理して、そのことは別項でしっかり書きたいと思います。