科学の目…科学写真帳(後編) ― 2020年12月20日 08時52分28秒
ミクロの世界ばかりではなく、科学の目はマクロの世界にも向けられます。
上はウィルソン山天文台の100インチ望遠鏡で撮影したオリオン座の馬頭星雲。
こちらはパロマー山天文台の200インチ望遠鏡が捉えた「かに星雲」。左は赤外線、右は深紅色の帯域(crimson light)で撮影されました。波長によって対象の見え方が劇的に変わる例です。
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いずれも天文ファンにはおなじみのイメージであり、依然として興味深い天体だとは思いますが、宇宙的スケールでいうと、ずいぶん「ご近所」の天体を選んだものだなあ…という気もします。「天体、遠きがゆえに貴からず」とはいえ、この辺のチョイスは、60年余りの時を隔てた宇宙イメージの変遷を如実に物語ります。
今、もし同様の企画が立てられたら、写真の選択は随分変わるでしょう。
地球周回軌道上の宇宙望遠鏡の登場、補償光学の発展、デジタル撮像と画像処理技術の進歩によって、我々の宇宙イメージは劇的に変わったからです。天界のスペクタクルは一気に増えましたし、宇宙を見通す力は100億光年のさらに先に及び、超銀河団からグレートウォールの構造まで認識するに至りました。
科学の進歩は実に大したものです。
とはいえ、この静謐なモノクロ写真は、最新の科学映像とはまた別の美と味わいを感じさせます。そこに優劣はないのでしょう。
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ついでなので、本書に収められた写真の細部も見ておきます。
この写真集は、写真原版をハーフトーン(網点)で製版しています。
各図版の周辺には印刷時の圧痕がくっきりと見られます。圧をかけたということは凹版印刷を意味し、しかもこれだけ痕が残るのは、相当プレスした証拠です。要は、通常の印刷とは異なる一種の美術印刷なのだと思いますが、背景の黒のマットな仕上がりが美しく、いかにもアートなムードが漂います。
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