空を旋回する惑星たち2021年12月11日 11時48分45秒

明るい青空の広がる、おだやかな師走の休日。
身辺も落ち着きを取り戻してきたので、記事を続けます。

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一目見るなり「へえ」と思った品。

(直径23cm)

これが何かというと、各惑星(水星~冥王星)の1年間の位置変化を曲線で示した円形図です。特に名称はありませんが、ここでは仮に「惑星運行盤」と呼ぶことにしましょう。これは天文学というよりも、占星術にかかわる品で、惑星の位置はそれっぽく黄道十二宮で表示されています※)。 


手書きの円盤を覆うように、回転式の透明なプラ盤が載っており、プラ盤には一定間隔で青線と赤線が引かれています。多分これをくるくる回して、ホロスコープづくりに役立てたのでしょう。


(水星と木星は特に金彩で表現されています)

この惑星運行盤を見て「へえ」と思った理由は二つあります。
まず一つの「へえ」は、惑星の運行を表現するには、いろいろな表現方法があると思いますが、「そうか、こんなふうにも表現できるんだ」という軽い驚きです。これはきわめてシンプルな方法で、難しいことは何もないのですが、少なくとも私の発想の中にはありませんでした。一種のコロンブスの卵ですね。

そしてもう一つは、「なるほど、こんなふうに表現すると、こんな曲線が描けるんだ」という発見です。各惑星の動きと地球の動きを合成すると、こんなクネクネした線が天に描ける…というのは、いうなれば天動説的な図像なのでしょうが、それがかえって新鮮に感じられました。


この品が作られたのは1951年ですから、そう古いものではありません。
いずれの占星術師の手になるものかは分かりませんが、表記はドイツ語、売ってくれたのはスペインの業者です。

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そういえば、以前も手作りの占星盤を載せたことがあります。


こちらは、2015年に神戸で開催されたイベント「博物蒐集家の応接間」に出品されたものです(URLは、イベントに合わせてでっち上げた特設ページにリンクを張っています)。オーストリアの奇術師、ノーバート・チエチンスキー(Norbert Ciecinski, 18??-c.1958)が晩年に使用したもので、ちょうど今回の品と同時代の品です。

まあ1950年代というのはたまたまで、いつの時代も、占星術師たちは自分の流儀に合わせて、占いの補助具をいろいろ手作りしてきたのではないかと想像します。市販品が生まれるにはニッチすぎるし、その方が有難味もあるのでしょう。

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(※)夜空に実際に見える黄道十二星座(みずがめ座、うお座、おひつじ座…)と、占星術家がいうところの黄道十二宮(宝瓶宮、双魚宮、白羊宮…)は、大昔は重なっていましたが、長年のうちに地球の歳差運動によってずれが生じ、現在ではほぼ1つ分ずれてしまっています。すなわち、星座としてのみずがめ座は、現在では宝瓶宮ではなくて双魚宮に位置し、うお座は白羊宮に、おひつじ座は金牛宮に…という具合です。この惑星運行盤が採用しているのは、黄道十二星座ではなく、あくまでも黄道十二宮の方です。

コメント

_ S.U ― 2021年12月16日 06時53分32秒

相当以前、天文年鑑だったか天文ガイドだったかに、何度か繰り返して、これと似て非なる、地球中心、恒星方向固定の太陽系図が出ていたような気がします。現在、古い号が手元にないので、確認は出来ません。

 その図では、ご紹介の占星術師の図と違って、地球から惑星までの距離も反映されていたので、火星や金星がループを描いてどっと地球に迫ってくるという感じの図でした。その迫力が強く印象に残っています。

 今、似た図をネットに探しますと、
http://www2.tbb.t-com.ne.jp/chibayoho/motion.html
にありました(KoiKoiさんの「授業で使える地学の実験」)。
早速やってみましたが、最近のステラナビゲータの版では、この方式の表示は難しいようです。(太陽系表示で、恒星が固定ではなく、太陽が固定されてしまいます。)

_ 玉青 ― 2021年12月18日 10時30分54秒

いやあ、天動説というのは実にダイナミックなものですね!
この図を見たら、さすがに昔の人も「これはあかんやろ」と思ったと思いますが、如何せん惑星までの絶対的な距離を知る術がなかったので、過去の偉才たちもそのおかしさに気づけなかったのでしょう。(仮に肉眼で惑星までの距離を認識できる力が人間にあったら、おそらく惑星が太陽の周りを回っていることは直感的に把握できたでしょうから、天動説の生まれようもなかったかもしれませんね。)

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