大コレクター逝く ― 2023年07月29日 09時38分29秒
ペーター・ラウマン(Peter Louwman)氏の訃報に接しました。
ラウマン氏は、アンティーク望遠鏡、及びその周辺光学機器の大コレクターです。
ラウマン家は自動車の輸入販売で財をなしたオランダの一族で、代々が蒐集したクラシックカーの一大コレクションは、その私設博物館に堂々と陳列されています。
■Louwman Museum 公式サイト
ペーター・ラウマン氏の望遠鏡コレクションも同博物館の一角に収蔵されているらしいのですが、改めて公式サイトを見ても、その説明がありません。「あれ?」と思って、よくよく事情を聞いてみると、下のページにその説明がありました。
■ラウマンの歴史的望遠鏡: ラウマン博物館(オランダ、ハーグ)
~世界最大の望遠鏡の個人コレクションは、オランダの自動車博物館の秘密の翼廊に隠されている~
~世界最大の望遠鏡の個人コレクションは、オランダの自動車博物館の秘密の翼廊に隠されている~
それによると、氏の望遠鏡コレクションは確かに博物館の一角に収められているものの、博物館の公式コレクションではなく、あくまでもラウマン氏の個人的営みであるため、ふだんは原則非公開。ただし毎月第1金曜日だけ、博物館の入館券を持った人に限り、見学を認めているということです。もちろん、事前にラウマン氏の許可を得れば、他の日でも見学は可能であり、いずれもラウマン氏自身が親しく展示品について説明をしてくれるだろう…というのですが、主亡き今、今後どうなるのかは不明です。
そのラウマン氏のコレクションの一端と、自ら展示品の解説をしてくれている在りし日のラウマン氏を、下の動画から偲ぶことができます。
■Louwman Historic Telescopes
それにしても、世に中にはすごい人がいるものです。
そして、この世界はまだまだ広いです。
★
ラウマン氏のご冥福をお祈りします。
なつのほし(第一夜) ― 2023年07月30日 17時52分26秒
ここにきて暑さもひとしおです。
昔は「夕涼み」という言葉があり、その言葉にふさわしい実態もありましたけれど、最近は日暮れ時でも相変わらずの熱暑で、「涼む」という感じではまったくないですね。ひたすら暑いです。
でも、今宵は夕涼みのつもりで、紙芝居の会を催そうと思います。
昭和31年(1956)発行の「なつのほし」。
「児童百科紙芝居全集・理科篇(6)」と銘打っており、外箱には「熊谷市立東小学校図書館」、「熊東小学校図書館」のスタンプが捺されているので、どうやら小学校低学年向けに編まれた作品のようです。
作者の福島のり子氏は紙芝居中心の児童文学者、画家の木川秀雄氏は1923年のお生まれで、児童書の挿絵を多く手掛けた水彩画家…と検索結果は教えてくれます。また、発行元の教育画劇社は、今も続く教育紙芝居の老舗。終戦直後の昭和21年(1946)に東京八重洲で創業、本作が出た昭和31年に現在の渋谷に移っています。
上の表紙絵を見せながら、先生のお話はこんなふうに始まります。
きら、きら、きら、きら、美しい星が、
空いちめん 宝石をちりばめたように
輝いています。
じいっと 空をながめていると いくつ
かの星が、人間や、動物や、いろいろな
道具などの形に、まとまって見えるように
思われます。
―― 少しの間 ――
おお昔の人々は、それに神話をむすびつけ
星座というものをつくり出しました。
いまでも 星座の名前は、そのまま残って
人々にひろく知られています。
空いちめん 宝石をちりばめたように
輝いています。
じいっと 空をながめていると いくつ
かの星が、人間や、動物や、いろいろな
道具などの形に、まとまって見えるように
思われます。
―― 少しの間 ――
おお昔の人々は、それに神話をむすびつけ
星座というものをつくり出しました。
いまでも 星座の名前は、そのまま残って
人々にひろく知られています。
(ぬきながら)
私たちのすんでいる地球は
…というところで、紙芝居は2枚目に移っていきます。
(この項つづく)
なつのほし(第二夜) ― 2023年07月31日 18時09分21秒
(昨日のつづき。タイトルを「なつのせいざ」から「なつのほし」に改めました。)
コマのようにくるくる太陽のまわりを まわって
います。そのため一日の同じ時間でも、空に見える
星座は季節によってちがうのです。
春、夏、秋、冬、いろとりどりに咲く花がちがう
ように、星空も たえずうつりかわっているのです。
さて、今日は、みなさんに夏の星のお話をいたし
ましょうね。
います。そのため一日の同じ時間でも、空に見える
星座は季節によってちがうのです。
春、夏、秋、冬、いろとりどりに咲く花がちがう
ように、星空も たえずうつりかわっているのです。
さて、今日は、みなさんに夏の星のお話をいたし
ましょうね。
…という流れで、まずは七夕の物語が語られます。
この紙芝居では、織姫は「天の王様の娘」である「織女姫」という設定です。
機織り好きの織女姫が、ある時期からぱたっと機織りをしなくなり、王様をいたく心配させるのですが、ある日その原因が露見します。
織女姫には 西の岸に住む 牽牛という
お友達が出来たのです。
(織女姫)『さあ、こんどは お舟にのってあそび
ましょうよ。」
まい日、まい日、織女姫は こうして
あそんでいたのです。
お友達が出来たのです。
(織女姫)『さあ、こんどは お舟にのってあそび
ましょうよ。」
まい日、まい日、織女姫は こうして
あそんでいたのです。
牽牛と織女を「お友達」とするのは、教育的配慮からかもしれませんが、ちょっと苦しいですね。
こうして天の王様の怒りに触れたふたりは、天の川の両岸に遠ざけられ、一年に一度しか会うことを許されなくなります。でも、
一年に一度のその日に 雨が降ると、川の
水がふえて 川が渡れなくなってしまうのです。
水がふえて 川が渡れなくなってしまうのです。
それを見かねた かささぎ鳥が
(かささぎ)『かわいそうに、私がわたして
あげましょう』
と、さっとつばさをひろげて 織女姫を
むこう岸にわたしてくれました。
―― 少しの間 ――
これが、七夕の、中国につたわる伝説です。
(かささぎ)『かわいそうに、私がわたして
あげましょう』
と、さっとつばさをひろげて 織女姫を
むこう岸にわたしてくれました。
―― 少しの間 ――
これが、七夕の、中国につたわる伝説です。
こうしてまず1つめの物語が終わって、次はおおぐま座のお話に移っていきます。
それにしても、この作画家は「かささぎ」を完全にサギと混同しているし、かささぎの橋の物語も、<サギの背に乗ってひとっ飛び!>みたいなイメージで描いているので、教育的にどうなの?と思わなくもありません。
おそらく当時の紙芝居業界は、同時代に隆盛をきわめた貸本漫画と同じノリで、とにかくどんどん数を出さないといけない…ということで、校閲とかもほぼノーチェックだったんじゃないでしょうか。
(第三夜につづく)
最近のコメント