極微のクラウド・コレクター2011年03月21日 15時46分18秒

薄紙をはぐように、復興は進んでいるようです。
息切れすることなく、足元を見ながら、一歩一歩進むことが大切な時期だと思います。

   ★

個人的な述懐ですが、理科の第1分野、すなわち物理と化学がさっぱり振るわず、「理科趣味」を標榜しながら、このブログで第1分野の出番が少ないのは、そのためです。
でも、天文だって物理学、少なくとも「物理的科学physical sciences」の一部じゃないか…という意見もあると思いますが― 特に欧米ではそうでしょう ―、でも幸いなことに、日本の中等教育では、天文は地学の一分野であり、さらに生物と組んで第2分野を構成しているので、あまり苦手意識を持たずに接することができるわけです。

   ★

そんなわけですから、原子の話題になると一寸腰が引けますが、ここはムード先行で、原子鑑賞の旅に出ることにしましょう。

原子はどんな姿をしているのか?
電子が原子核の周りをクルクル回っている「惑星型モデル」は、20世紀の初めにラザフォードらが提唱したもので、素粒子というのは文字通り小さな粒なんだということが仮定されていました。

しかし、ちょうど同じころに産声を上げた量子力学の発展によって、「粒々した素粒子観」は変更を迫られることになり、粒子は同時に波動でもあるし、その一方で、エネルギーという形のないものも、実は不連続な値しか取り得ない「粒々した」ものなんだということになりました(この辺が、分かったような分からないような話です)。

そんなわけで、電子はもはや惑星のように原子核の周りを回るのをやめて、原子核の周りの一定領域に一定の確率密度で存在する、モヤモヤした存在へと衣替えし、これを電子雲(でんしうん)と呼びます。


その雲の形を、ガラスキューブの中にレーザー加工で表現したのが、この「電子雲3次元ガラス彫刻模型 NEBULA(ネビュラ)」です。埼玉大学と上野の科学博物館のコラボ商品で、以前、科博のミュージアム・ショップで買いました。
キューブの大きさは、3×2×1.5センチですから、ちょうど親指大のかわいいサイズ。

これらはいずれも水素原子の電子雲を表しています。
同じ水素原子でも、いろいろな電子雲があるのは、原子というのは、通常の安定した状態(基底状態)以外にも、一時的な高エネルギー状態(励起状態)をいろいろ取りうるので、それによって電子雲の形状も変わってくるらしいです。


暗がりで光を当てると、電子雲がボンヤリと浮かび上がり、不思議な表情を見せてくれます。

以下は何だかよく分からないながらも、波動関数の解として得られた、さまざまな電子雲の形。

3s軌道

3pz軌道

3dzx軌道

「惑星型モデル」の電子軌道の簡明さとは違いますが、ここにはまた別の美しさがあるようです。