鹿児島へ(2)…鹿児島県立博物館2015年01月11日 20時17分16秒

さて、いくぶん微妙な宇宙情報館を後にして、次に目指したのは鹿児島県立博物館。
…と言っても、実のところ、今回の旅はすべて行き当たりばったりです。たまたま件のうなぎ屋さんで昼食をとっていたときに、宇宙情報館のことを知り、さらにそこからフラフラと腹ごなしに歩いていたら、ちょっと変わった建物が見えたので、立ち寄ったら博物館だったというだけのことです。まあ、人生はすべからく旅ですから、それはそれで良いのです。


さて、「ちょっと変わった建物」というのはこれです。
天文館通りを抜けると、照国神社や鹿児島城跡のある城山地区に出ますが、その一角にこういう古風なビルヂングが立っていました。


交差点の角に立つ、曲線を生かしたフォルムは、街並みの添景として、よい効果を生んでいます。元は県立図書館として昭和2年(1927)に完成した建物で、昭和56年(1981)から博物館として使用されているそうです。

ここは「博物館」と言っても、歴史系ではなく、純然たる科学博物館です。
で、結論をいえば、行って良かったなあと思います。展示は主に子供の目線で行われていて、いかにも校外学習で訪れる場所という印象ですが、大人が見ても十分楽しめます。いや、大人の方が楽しめるかもしれません。



建物の古風さと相まって、館内にはいかにも懐かしい昭和の科学館の空気が漂っています。


それでも、うら寂しい感じは微塵もなくて、このマングローブ林の原寸大ジオラマなどは、結構お金がかかっている感じです。



 その一方で、素朴な手作り感のある展示も多いのですが、お金をかけてない分、手間はかけているぞと思わせるものがあって、学芸員の方のやる気が感じられます。実際に手で触れられる展示が多いのも特徴でしょう。


シロクマの剥製も、エビ・カニ類の標本も触りたい放題。


地味な「市街地の虫~虫はどこにでもいる~」の展示を見てみます。


蝿嫌いの人には申し訳ないですが、このオオクロバエの標本も、ラベルを見ると気合を入れて作っていることが分かります。作られたのは、たぶん1983年当時に在籍していた学芸員の方(マエノケイゾウさん)。わざわざ展翅もされていますね。
神は細部に宿り給う。こういうところに、博物館の本気具合は露呈するものです。


この「貝の貝」は素敵だと思いました。


アライグマへの注意を喚起する展示。
タヌキやアナグマと並んでいるのが、万人向けで分かりやすい。

   ★

そして、この博物館のもう一つの特徴は、その強烈な郷土愛です。

展示構成は、ほぼ完全に鹿児島の自然に特化しているので、地元の人にとっては、身近な自然を捉えなおすきっかけに、また観光客にとっては、鹿児島という日本の中でもかなり特異な自然環境を大観するよい手引きとなってくれます。(これが本州の中央だと、郷土の自然といっても、他との差別化を図り難く、ちょっとインパクトの弱い展示になってしまうでしょう。)



名産のサツマイモ・黄金千貫と桜島大根の展示。

桜島といえば、写真をとりそこねましたが、桜島と鹿児島の大地を形成する鉱物についての展示室も充実していました。展示室の抽斗は自由に開けることができ、中には新古さまざまの岩石標本がびっしり入っていました。


巨大な屋久杉の年輪を示す展示。


こちらは薩摩黒豚。


説明ボードを読み、映画「もののけ姫」で、知恵に優れた老猪・乙事主(おことぬし)が、若いイノシシたちの退歩を嘆いたのは、こういうことだったのか…と思いました。


入口を入ってすぐのところに飾られている「ウシウマ」の骨格標本。
牛だか馬だかはっきりしませんが、聞いてみると「牛のような馬」で、やっぱり馬なのだそうです。秀吉が朝鮮に侵攻した慶長の役の際、当時の島津の殿様が、半島から連れ帰った馬の子孫で、やっぱり鹿児島にちなむ動物です。昭和になって最後の個体が死に絶え、今は骨のみがこうして空しく残っています。