金と銀 ― 2023年06月24日 06時28分23秒
昨日の金色の世界時計から、似たような姿かたちの星座早見を連想しました。
厚みは違いますが(星座早見はガラスがドーム状に大きく盛り上がっています)、それ以外はほぼ同大。
外周の時刻表示を見ると、24時のところが三日月マークになっている点までそっくりです。ただし、金のほうは時計回りに「1、2、3…」、銀の方は反時計回りに「1、2、3…」と数字が振られています。
最初は「これって、実は同じ工場で作られたんじゃないか?」とも思いました。
でも、星座早見盤は2000年代の日本製であり、世界時計の方は、流通した国こそアメリカですが、実は台湾製です(この事実も、この品が東西冷戦期の、つまり中国が「世界の工場」になる前の時代の産物ではないか…と思った理由のひとつです)。
結局、生まれた国も時代も違うので、これはやっぱり他人の空似なのでしょう。
いずれもペーパーウェイトですから、自ずと適当な大きさというのは決まってくるでしょうし、24時間の回転盤を組み込んだ実用品でもあるので、互いにデザインを真似たり、真似されたりしているうちに、似たような姿になることもあるのでしょう。
これが日米台を超えて再会を果たした生き別れの兄弟だったら、もちろん感動的ですし、まったくの他人の空似だとすれば、それはそれで不思議です。プロダクトデザインにも、収斂進化や擬態がある例かもしれません。
★
さあ、これから足穂の待つ京都に行ってきます。
コメント
_ S.U ― 2023年06月25日 07時41分54秒
_ 玉青 ― 2023年06月25日 21時54分10秒
「真夜中の三日月」については、少し温めているネタもあるんですが、絵画には結構平気で登場しますね。そして、それに突っ込む人がいて…というのも昔からのお約束のようです。
古くから太陰暦で生活し、月相と月の出の時刻との関係を熟知していたはずの――現に「立ち待ち月」「居待ち月」「有明月」といった優美な語彙を使いこなしてきた日本人ですら、勘違いしている人が少なくないわけですから、ましてや西洋の人は、その辺が緩くなっててもやむを得ない気もするんですが、しかし"Midnight Crescent Moon" という成句があるとなると…?うーん、何か深い意味があるんでしょうか?ちょっとにわかに思いつきません。
まあ、件の品についていえば、これはごく一般向けの品ですから、そう込み入った判じ物めいたものが登場するはずはないので、ここはあっさり、24時は真夜中だから夜の記号として月が登場しているのであり、月を記号的に表現すると三日月になるのだ…というシンプルな説に一票投じます。
古くから太陰暦で生活し、月相と月の出の時刻との関係を熟知していたはずの――現に「立ち待ち月」「居待ち月」「有明月」といった優美な語彙を使いこなしてきた日本人ですら、勘違いしている人が少なくないわけですから、ましてや西洋の人は、その辺が緩くなっててもやむを得ない気もするんですが、しかし"Midnight Crescent Moon" という成句があるとなると…?うーん、何か深い意味があるんでしょうか?ちょっとにわかに思いつきません。
まあ、件の品についていえば、これはごく一般向けの品ですから、そう込み入った判じ物めいたものが登場するはずはないので、ここはあっさり、24時は真夜中だから夜の記号として月が登場しているのであり、月を記号的に表現すると三日月になるのだ…というシンプルな説に一票投じます。
_ S.U ― 2023年06月26日 06時39分21秒
>絵画には結構平気で登場しますね
陰暦が使われていた日本の時代劇でも、けっこう、三日月は夜中に出ます。まあ、脚本家は陰暦の時代には暮らしていないのでしょうからやむを得ないのかもしれませんが。時代劇で、三日月が出ている時に策謀行動をしているのを見ると、なんで宵の口からそんなことを、という印象を持ってしまうのですが、どうやら話としては真夜中だったりします。
でも、そういう(架空の)真夜中の三日月は、やはり当然として暗い夜空に出ていて、低空にあります。ということは、日本人を含め、世界の一般の人々には、三日月は夜中頃まで空にあるのだろう という推測があると推定されます。おそらくそれは、宵の口にかなりの高度にある月を見て、これは夜中まで沈まないだろうという外挿をする心理が働くのではないでしょうか。
ということで、答えとして、玉青さんの単なる記号説と、私の真夜中真見説の中間も考えられ、合理的推定説というのもありうるように思います。
民俗学としては、真見説でも推定説でも区別しがたいものと思いますが、今後の進展を期待いたします。
なお、フランス語"croissant de minuit" と ドイツ語"mitternachte Mondsichel, Mitternachtsmondsichel"で検索しましたが、ほとんど引っかかりません。この程度では、フランス語圏、ドイツ語圏には、天文を示す用語としてそのような成句はないのではないかと思います。
陰暦が使われていた日本の時代劇でも、けっこう、三日月は夜中に出ます。まあ、脚本家は陰暦の時代には暮らしていないのでしょうからやむを得ないのかもしれませんが。時代劇で、三日月が出ている時に策謀行動をしているのを見ると、なんで宵の口からそんなことを、という印象を持ってしまうのですが、どうやら話としては真夜中だったりします。
でも、そういう(架空の)真夜中の三日月は、やはり当然として暗い夜空に出ていて、低空にあります。ということは、日本人を含め、世界の一般の人々には、三日月は夜中頃まで空にあるのだろう という推測があると推定されます。おそらくそれは、宵の口にかなりの高度にある月を見て、これは夜中まで沈まないだろうという外挿をする心理が働くのではないでしょうか。
ということで、答えとして、玉青さんの単なる記号説と、私の真夜中真見説の中間も考えられ、合理的推定説というのもありうるように思います。
民俗学としては、真見説でも推定説でも区別しがたいものと思いますが、今後の進展を期待いたします。
なお、フランス語"croissant de minuit" と ドイツ語"mitternachte Mondsichel, Mitternachtsmondsichel"で検索しましたが、ほとんど引っかかりません。この程度では、フランス語圏、ドイツ語圏には、天文を示す用語としてそのような成句はないのではないかと思います。
_ 玉青 ― 2023年06月26日 09時38分42秒
>なんで宵の口から
あはは。だいぶカジュアルな謀議ですね。
改めて考えてみると、月はしょっちゅう出ているので、そういうごく日常的な経験だからこそ、いつどんな形の月が出ていたかというのは、案外記憶の中でごっちゃになりがちな気もします。そして「お月さまらしい月」といえば、つい三日月を持ち出したくなる…というのも東西共通の心性でしょう(そういえば、そもそも「月」という漢字自体、三日月をもとにしたものですね)。
この件、いろいろ話題には事欠かないと思いますので、ひとつ前で述べた「温めているネタ」とともに、おいおい語り明かしてまいりましょう。S.Uさんの方でも何か新知見がありましたら、ぜひまたご教示ください。
あはは。だいぶカジュアルな謀議ですね。
改めて考えてみると、月はしょっちゅう出ているので、そういうごく日常的な経験だからこそ、いつどんな形の月が出ていたかというのは、案外記憶の中でごっちゃになりがちな気もします。そして「お月さまらしい月」といえば、つい三日月を持ち出したくなる…というのも東西共通の心性でしょう(そういえば、そもそも「月」という漢字自体、三日月をもとにしたものですね)。
この件、いろいろ話題には事欠かないと思いますので、ひとつ前で述べた「温めているネタ」とともに、おいおい語り明かしてまいりましょう。S.Uさんの方でも何か新知見がありましたら、ぜひまたご教示ください。
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これは、独立の偶然とは思えず、なにか西洋圏で謂れがあることなのか、気になりました。それこそかなり北極圏に近いところに行かない限り、真夜中に三日月は見えないはずです。英国や北欧なら見えるみたいですが、季節が限られます。
https://www.stjerneskinn.com/moonrise-world-london-new.htm
上弦の三日月が深夜に見られるのは4~5月、下弦の三日月は7~8月あたりです。(サマータイムを考慮すると月出没が1時間遅い方にずれます)
それで、ネット検索では "Midnight Crescent Moon"という成語があるようです。天文用語ではなく芸術感覚的な言葉のようで、意味不明です。だから、天文学的には推定するしかないのですが、可能性として、
・午前0時ごろに見える月
・下弦の三日月(私の言うところの「マイナス3日月」)
・ただの三日月に深い意味もなく枕詞のmidnightがついただけ
と考えてみましたが、デザインの用例を見るに、どれも暗夜の低空の三日月で、上弦、下弦の双方あり、どうやら、言葉通り、午前0時ごろに見える月を指しているようです。なお、英語のmidnightの意味の解説としては、「午前0時(頃)」という意味で、日本語の「深夜」のような4時間以上もあるような広い時間帯ではなさそうです。
ぜんぜん手前勝手な推測ですが、英国などの高緯度地方で、本当に午前0時頃に三日月が見えることが時おりあって(上記の通り、おもに季節で決まるのですが)、それが人々に感銘を与え、「真夜中の三日月」という成句が生まれ、それで、三日月が午前0時のシンボルとして通用するようになった ということにとりあえず推定しておきたいと思います。
天文民俗学的には、英語以外の西洋語もあたるべきでしょうが、今回は商品がアメリカ向けのものらしいので、英語だけにしておきます。