酷暑と克暑 ― 2024年07月06日 12時26分10秒
猛暑到来。やるせないほど暑いですね。
夏の酷暑を英語で「Dog days」と呼び、これはおおいぬ座のシリウスが「ヘリアカル・ライジング」、つまり日の出前のタイミングで東の空にのぼることに由来し、遠く古代ローマ、ギリシャ、さらにエジプトにまでさかのぼる観念の由。
(1832年出版の星座カード『Urania’s Mirror』複製版より、おおいぬ座ほか)
夜空にシリウスが回帰することは、エジプト人にとってはナイルの氾濫と豊作のサインでしたが、人間や動物にとってはいかにも苛酷な時期ですから、Dog days には退嬰と不祥と節制のイメージが伴います。
(同上拡大)
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ただし、そこはよくしたもので、今は地球が太陽から最も遠い時期に当たります。
今年、地球が太陽から最遠の「遠日点」に達したのは、ちょうど昨日でした。昨日、地球は太陽から1.017天文単位〔au〕(1auは、地球と太陽の平均距離)まで遠ざかり、これから楕円軌道に沿って徐々に太陽に近づき、来年1月4日に0.983au の「近日点」に至ることになります。
(Willam Peck『Handbook and Atlas of Astronomy』(1890)より、水星~火星の軌道図)
ごくわずかな違いのようですが、太陽に対する垂直面で考えると、遠日点にあるときは近日点にあるときよりも、受け取るエネルギーは約7%も少ない計算で、これは結構な違いです。これぞ神の恩寵、天の配剤と呼ぶべきかもしれません。
それを思うと、近日点と夏が重なる南半球の人はさぞ大変だろうなあ…と同情しますが、そのわりに暑さの最高記録が北半球に偏っているのは、あちらは海洋面積が北半球よりも圧倒的に広く、水が大量に存在するためでしょう。これまた天の配剤かもしれません。
【おまけ】
星座早見をくるくるやって、シリウスのヘリアカル・ライジングを探してみます。
秘蔵の<紀元2世紀のアレクサンドリア用星座早見盤>で試してみると、シリウスの出現は、7月上旬で午前5時頃。そしてアレクサンドリアの日の出もちょうどその前後ですから(今日の日の出は5:02)、今がヘリアカル・ライジングの時期ということになります。
でも、これは緯度によっても大きく変わります。
試みに戦前の三省堂星座早見をくるくるすると、シリウスが東の地平線上にのぼるのは、今の時期だと午前7時すぎで、当然肉眼では見えません。あとひと月半もすると、午前4時半ぐらいになるので、日本でもようやくヘリアカル・ライジングを迎えることになります。
コメント
_ S.U ― 2024年07月06日 16時55分25秒
_ 玉青 ― 2024年07月07日 06時51分15秒
いやあ、いいお話ですね。私も多感な頃にそんな天文ライフを送ってみたかったです。
8月13日は、ちょうど月遅れのお盆の時期ですね。そういえば、以前S.Uさんと流星群と死者儀礼の関係について、何か話をしていませんでしたっけ?…と思って、自助努力で探したら、以下のコメント欄がそれでした。我々もなかなか風雅なやり取りをしていますね(笑)。
★死者はどこからやって来るのか?
http://mononoke.asablo.jp/blog/2022/10/30/9536993
8月13日は、ちょうど月遅れのお盆の時期ですね。そういえば、以前S.Uさんと流星群と死者儀礼の関係について、何か話をしていませんでしたっけ?…と思って、自助努力で探したら、以下のコメント欄がそれでした。我々もなかなか風雅なやり取りをしていますね(笑)。
★死者はどこからやって来るのか?
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もちろん大人になってから本で知った横文字単語ですが、なぜか、自分の中の原始の血がさわぐような気がする言葉です。古代の人がこれで生業のための季節を知ったからだと思います。
シリウスのヘリアカル・ライジングは、ちょうど、ペルセウス座流星群の徹夜観察で見られます。ペルセウス座流星群は8月13日の明け方に多く見られる場合が多く(年によって1日程度以内の前後はありますが)、流れ星を数えながら空が明るくなって、もう流れ星も見えないなと思った頃に、シリウスが昇るとお開きというパターンで昔は熱心にやっていました。最近は、根性がなくなったので、朝がた明るくなるまでがんばるなどということはありません。