テレスコープマン2026年01月27日 18時59分47秒

ブログを続けていると、過去記事に関連して、いろいろな発見があります。
以下は2年前の記事ですが、これについても発見がありました。

(以下の記事より画像再掲)

 
記事では、1枚のロンドンの絵葉書をネタに、ビッグベンのそばで通行人に望遠鏡をのぞかせて日銭を稼ぐ男を話題にしました。でも、絵葉書の主役は、あくまでもそこに立つ古代ケルトの女傑ブーディカ(ボアディケア)の像であり、望遠鏡商売の男はたまたまそこに写り込んだだけだろうと、その時は思いました。しかし実は、彼自身が一種のロンドン名物として「テレスコープマン」の異名をとっていた…というのが、今回の発見です。

そのことが分かったのは、下の写真を見つけたからです。


まぎれもなく同じ場所であり、同じ男です。


その正体は裏面に説明がありました。


この写真は London News Agency という古くからのニュース配信会社のアーカイブに含まれていたもので、紙が貼りついて読みにくい箇所もありますが、適当訳すればこんな感じでしょう。

ウェストミンスターの天文家、ブーディカ像の下で32年
 エドワード・クロッカーがウェストミンスター橋のたもとで営む望遠鏡商売は、昨日で満32年を迎えた。彼はこの間休むことなく、毎日自分の持ち場に立ち続け、頭上の銅像と同じぐらい有名になった。クロッカーはささやかながらも天文学に没頭し、星や星座が見える限り、それを指し示すことができた。(写真は本日(月曜日)撮影。写っているのは望遠鏡の脇に立つエドワード・クロッカーとビッグベンを覗く観光客)」

(観光案内など彼の商売ものを入れた足元の箱)

上の写真には肝心の日付けがありませんが、ここまで分かれば、追加情報を探すのは容易です。さっそく見つかったのは次のページ。

 
これまた過去の記録写真とそこに付けられたキャプションの紹介です。こちらも適当訳。

ブーディカ像の下のテレスコープマン、エドウィン・クロッカー
 1935年で88歳になるエドウィン・クロッカー、別名「テレスコープマン」が、ウェストミンスターの「ブーディカ」の銅像前に屋台店を出して満40年になる。クロッカーは絵葉書を販売し、望遠鏡でビッグベンの文字盤を見たい人に1ペニーで覗かせた。」

上の写真では名前が「エドワード」になっていましたが、他の情報も参照すると、どうやら「エドウィン」が正解のようです。1935年当時、40年間商売を続けていたということは、「32年間」を報じる上の写真は1927年に撮影されたものと思われます。

   ★

19世紀から続く街頭の望遠鏡商売。

それが大衆の天文知識向上に少なからず貢献したこと、そして何よりも望遠鏡商売に励んだ男たち自身が、純な「星ごころ」を持ち、決して豊かとは言えない環境の中で知識と機材の向上に熱心だったこと、その実相を活写したのが、『ビクトリア時代のアマチュア天文家』(邦訳2006、産業図書)でしたが、その著者であるアラン・チャップマン博士が1月21日に亡くなられたとの報に接しました。

テレスコープマンの写真とともに、その「星ごころ」を博士の霊前に供えたいと思います。ご冥福をお祈りいたします。

コメント

_ パリの暇人 ― 2026年01月28日 07時29分22秒

一昨日、イギリスの Scientific Instruments SocietyのBulletinのバックナンバーをオンラインでみていたのですが、本当にたまたま、Chris McKay氏が書いた Big Ben's Telescope Man という記事 (Bulletin N. 121, June, 2014, page 24 - 27) を見かけました ! エドウィンさんはチョコレートなども売っていたようです。
記事には写真が12点ありますが、メインの、1-6までの写真の説明書きを貼っておきますのでご参考ください。

Fig. 1 Seated on bis box, Edwin Crocker the Big Ben Telescope
Man sold post cards, chocolate, and for a penny you could view
Big Ben through bis telescope. Rotary PC.

Fig. 2 Another later view of the Big Ben Telescope Man. Again
like the Rotary card, this one was unused. Here the emphasis
is on Boadicea's stature rather than the Telescope Man.
Stereoscopic PC.

Fig. 3 The Telescope Man in 1935. Close
up of a young customer making use
of a box to stand on.According to our
member Desmond Squire, it would
be difficult for anyone to use the big
telescope without a footstool.

Fig. 4 Magnifying a real photographic postcard often reveals a wealth of detail. Detail
of telescope and merchant ware in the Rotary PC of .figure I.

Fig. 5 Close-up of astronomical telescope with prismatic inverter and common hand
held terrestrial telescope secured to the top of the brass barrel of the main scope.

Fig. 6 An older and greyer man waits for business. The
Peek Frean biscuit box was perhaps for storing his wares.
Most certainly it would be useful for shorter customer to
stand on like the boy in figure 3. Detail of a lithographic
stereo card of figure 2.

_ YukiSnowy ― 2026年01月28日 10時02分49秒

こんにちは。
ウエストミンスター・ブリッジの袂ですね。随分昔,この古代ケルト女王銅像の横の階段を下りて船に乗り,グリニッジ天文台へ行きました。この場所で天文好きの望遠鏡おじさんが長年商売をなさっていたとは興味深いです。
また行く機会があるかどうかわかりませんが,どこかでこの像の写真でも見かけたら望遠鏡おじさんのことを思い出すと思います。

_ 玉青 ― 2026年01月29日 18時57分10秒

○パリの暇人さま

おお、何たる偶然!
それにしてもテレスコープマン、ことエドウィンさんはやっぱり相当有名人だったのですね。天文趣味史における(自分的には)新たな発見として、その存在を深く印象に刻みました。キャプションのご紹介もどうもありがとうございました。おかげで手元の写真をいっそうよく理解できた気がします。

○YukiSnowyさま

それは素敵な思い出ですね!エドウィンさんがかつて商売していた場所は、グリニッジへの渡船場でもあったと伺い、その天文つながりに深く感じるものがあります。私もいつかロンドンを訪ねる折があれば、ぜひビッグベンのそばで「望遠鏡おじさん」のことを偲びたいと思います。

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