ささやかなガラスの宝石2015年10月19日 06時41分02秒

(昨日のつづき)

さて、「欲しいなあ、高いなあ、無理だなあ」で終わってしまっては、全くの愚痴にすぎません。そこを何とか工夫するのが、趣味の道の奥深さです(本当かな?)。


そこで、私なりに努力して見つけたのが、この模造宝石の見本カード。
高遠な目標に対して、あまりにもいじましい成果ですが、これだってチェコのガラス工芸史の一断面を物語る品には違いないので、まったくツマラナイ品というわけでもありません。

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この品物、チェコの売り手は、「チェコ製のドラゴンズ・ブレスと箔入りガラスのビンテージ・カボション」とネーミングして出品していました。

Dragon's Breath (ドラゴンの吐息)」というのは、1900年代初頭に生み出されたガラス宝石の一種。正真のドラゴンズ・ブレスは、溶融したガラスに金属を加えて、独特の光輝を出すそうですが、その辺の用法は結構ルーズで、今やドラゴンズ・ブレスとは呼べない製品も、そう呼ばれて売り買いされているそうです。(このチェコの模造宝石が、本当のドラゴンズ・ブレスかどうか、私には判定する知識がありませんが、少なくとも売り手はそうネーミングしていました。)


そして、このギラリと光っているのが、「箔入りガラス(金属箔を色ガラスで挟み込んだ複層ガラス)」で、それをカボション成型したものです。

以下、売り手の説明文をそのまま掲げます。

 「サイズ:20×15cm、 素材:ガラス、 年代:1950年代、 産地:北ボヘミア
 サイズと色を記した説明ラベルと共にカードに糊留め。共産主義時代の品として収集の価値あり。内容に1個欠落がある以外、状態は良好。宝石細工、ファッションデザイン、縫製、手工芸をたしなまれる方に。チェコの有名なガラス産地、ヤブロネツ・ナド・ニソウ製のこの品は、20世紀チェコのガラスメーカーが有した技能と芸術的才能を遺憾なく示している。」

こう書かれると、ささやかな品でも、何となく有難味がありますね。


貼られたチェコ語のラベルを見ると、いちばん大きなターコイズにはじまって…


オパール、トパーズ、ペリドット、赤サンゴ、ラピスラズリなどが色とりどりに並び、いちばん端っこには…


小なりといえど、japan jade(日本翡翠)が鎮座し、「うむ」と思いました。


どうです、なかなかきれいなものでしょう。
当分はこれを眺めて、ささやかな悦に入ることにします。

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趣味を楽しむ上で、富者と貧者の間に量的格差があるのは事実ですが、喜びの質において、両者はそう大きく隔たるものではありません。「金持ちだからといって、米の飯を一升食えるわけじゃなし」という昔の人の言葉は、大抵の場合正しいです。


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▼閑語(ブログ内ブログ)

安倍さんがシルクハットをかぶって、喜々としてアメリカの空母に乗っていました。
アメリカの大統領に会う時だって、あんな格好はしないのに、なぜ空母に対し「正装」で敬意を表さねばならんのか? そんなに有難い存在なんでしょうか?

あれを見て、ミズーリ号における降伏文書調印の光景を思い起こした人も多いと思いますが、安倍さんなりにポツダム宣言を読み直し、今さらながら戦後レジームを再確認したということでしょうか。まったく意表を突いた振る舞いです。