首都の週末(6)…博物蒐集家の応接間(後編)2016年07月31日 11時32分42秒

今日も暑い一日。蝉の声が耳を圧するようです。

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先々週の土曜、7月23日は、「博物蒐集家の応接間」のレセプションの日でした(イベント自体は8月いっぱい続きます)。


メルキュール骨董店さんによる幻灯上映会と、それに併せて、私が「19世紀の天文趣味と天文アンティーク」をテーマにおしゃべりするというもので、企画を立てられたantique Salonさんにとっても初めての試みですし、まあ、すべてが流れるように進んだとも言い兼ねますが、それもご愛敬でしょう。

…というか、足を引っ張ったのは他ならぬこの私です。
それでも一参加者として、私自身、当日は大いに愉しみましたし、参加された方々もそうだろうと信じています。主催者側の皆さんと、当日参加された方々に、ここで改めてお礼を申し上げます。

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一夜限りの催しとはいえ、そこにはさまざまな出会いがありました。

主催者側であるpiikaさん(http://www.piika39.com/)のお二人とは、久しぶりにお会いしたのですが、あの飄々とした明るさは一体何なんでしょうね。本当に不思議な方たちです(でも素敵なお人柄です)。

そして、オープニング前に、店舗内をブラブラしているとき、声を掛けていただいた男性。「みくろまくろときどきふうけいの」と名乗られて、一瞬何か呪文めいた感じがしましたが、すぐにそれが「ミクロ・マクロ・時々風景」の意であり、常々敬服している理系ブログの書き手である「ZAM20F2」さんその人であることを知って、本当にびっくりしました。

(勝手キャプチャーご容赦を)

ミクロ・マクロ・時々風景 http://mmlnp.exblog.jp/

ZAM…さんは、「レセプションには出ませんが、ご案内だけでもと思い…」と、翌24日に予定されていた「顕微鏡の会」(私は存じ上げませんでしたが、そういう顕微鏡マニアのディープな会があるのだそうです)の例会案内をお届けくださったのでした。当日は日帰りだったので参加することは叶いませんでしたが、こうしてZAM…さんにお目にかかれただけでも、とても嬉しかったです。

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レセプションは、ナチュラルヒストリエに隣接するセミナールームで行われました。

会場には、メルキュールさんが準備された古い幻灯器と、「ミロスコープ」と呼ばれる写真や絵葉書を(透過光ではなく表面反射光によって)投影する装置が既にセッティングされ、メルキュールさんが余念なく調整されていました。その様子は、piikaさんが動画を添えてツイートされています。
https://twitter.com/piika39/status/756793579641548800

幻灯の上映会というと、正面から白いスクリーンに投影する「フロント・プロジェクション」方式を想像されると思いますが、今回は会場内を十分暗くすることができなかったため、擦りガラスの背後から投影し、それを擦りガラスの手前から鑑賞する「リア・プロジェクション」方式を採用しました。

上で試写しているのは、太陽の周りを地球が回る様子をギアとクランクで再現した「メカニカル・ランタン」です(さらにその周囲を黄道12星座が取り巻いています)。


↑は、動画のものとは異なりますが、同様の仕組みを持ったメカニカル・ランタンの例。↓はギア部分の拡大。


こういう映像を見ながら、私は18世紀末のウィリアム・ハーシェルによる銀河宇宙の探求や、19世紀半ばに分光学と写真術がもたらした天文学の革命的進歩、さらにスペクトル観測のデータから帰結された膨張宇宙論などについて触れ、人々の宇宙イメージが爆発的に進化・拡大を遂げた19世紀の時代相を伝えるべく、熱弁をふるったのです(まあ、全ては聞きかじりの知識であり、せっかくの「熱弁」も、不明瞭な言葉遣いのせいで、要領を得ないものであったことは遺憾に思います。)


また同時に、本格的な産業社会・市民社会の到来によって、19世紀には趣味で天文を楽しむ人が増え、そうした人向けに生み出されたモノを、我々は現在「天文アンティーク」として享受しているのだ…という事実を指摘し、「現在作られている宇宙グッズも、100年後にそうなっているといいですね」と結んだのでした。

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レセプション後も、フジイキョウコさんや、そのお連れの編集者I氏と、立ち話ですがお話しできて、大いに元気をもらいましたし、「ブログを読んでますよ」という奇特な――とても奇特です――若い方に声をかけていただき、同好の士を見出した嬉しさに、思わず興奮してしまいましたが、どうぞ良き蒐集を重ねられますように…と、もしこの一文をご覧になっていたら、改めてお伝えしたく思います。

末筆ながら、「ナチュラルヒストリエ」という趣味性の濃い空間を作り、その運営に尽力されている三省堂書店の担当者の方々にもエールを送ります。常に算盤片手の会社組織の中で、この種の試みはなかなか大変なことだと思いますが、文化の創出・発信という、書店本来の在り方に立ち返り、今後も息の長い取り組みを期待します。

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今日は決戦の舞台となっている首都。
誰が首都の顔となるのかは予断を許しませんが、新知事には、ぜひ人々の暮らしと文化を大切にする街づくりを行なってほしいです。