図鑑の森へ2011年01月25日 22時18分47秒

今更という気もしますが、最近気になるアイテムは「図鑑」です。それも、いわゆる「原色図鑑」。

世に図鑑好きの人は多いようです。その証拠に、「図鑑、好き」で検索すると、いろいろなページがヒットします。たとえば、雑誌「BRUTUS」の元副編集長、鈴木芳雄氏のブログ記事。

■子どもの頃から図鑑好きなもので…(2007年4月30日掲載)
 http://fukuhen.lammfromm.jp/?p=34

「ゴールデンウィークでもあるし、本の整理でもしようかなと思ったのだが、いざ始めると、ついつい「こんな本も持ってたのかぁ」と見たり読んだりしてまったく進まない。 今日は久しぶりに図鑑にすっかりハマってしまった。いっとき、戦前~昭和30年代くらいの図鑑を積極的に集めていた時期がある。なぜ、それらに惹かれるかというと、昭和30年代生まれの自分が子供の頃、見ていた図鑑がその時期のものだったからだろう。それと、カラー印刷も普及しだした時期でもあり、いま見ていても面白いのだ。」

上の記事には、当時の図鑑の図版も転載されていて、それと上の文章を併せ見る時、「おお!」と深くうなずかれる方も少なくないでしょう。
それにしても、ああいう図鑑はいつ生まれたのでしょうか?

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…という問題意識を持ちつつ、先日、新刊本屋で買ったのが、『牧野植物図鑑の謎』(俵浩三・著、平凡社新書、1999)という本でした。ずいぶん前に出た本ですが、私はずっと知らずにいて、今回初めて読みました。


この本には、(ほぼ植物図鑑限定ですが)明治の「図鑑史」が語られていて、明治40年代に博物図鑑ブームがあったことや、それは何故か?という謎ときが書かれており、滅法面白かったです。これは類書のないユニークな本ですね。

で、さらに去年、神戸の古書店で買った『牧野富太郎―私は草木の精である』(渋谷章・著、平凡社ライブラリー、2001)も、積ン読本の山からレスキューして読みました。こちらも面白かった。


これらの本に教えられつつ、私なりに「図鑑史」をレビューしてみたいのですが、現在他に注文している本もあるので、この件はもうちょっと寝かせておこうと思います。

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ところで、1つ前の記事について、出版界に身を置く某氏から丁寧なメールをいただきました。それによると、「出版不況なのに本の山ができている」というのは認識不足で、事実は「出版不況だから出版点数が増えてしまう」のだそうです。

つまり、一点あたりの販売部数が落ちているので、手を変え品を変え、たとえ中身が薄まろうとも、次々と新刊を出し続けねばならないのが実情なのだとか。その最たるものが、数年来続いている「新書ブーム」だという話で、なるほどと思いました。

見た目の活況の裏で、出版社の苦悩は深いようです。
健全な出版文化を維持するには、100年前の本を見ているだけではダメなことは確かなようですね。