星の煙をくゆらせる晩 (後編)2011年01月17日 20時04分57秒

と、赤い缶のかげから、突然1台の小さな車が現われました。


「クシー君!迎えに来たぜ」
車の窓ごしに、クシー君とよく似た男の子が手を振っています。

「あ、イオタ君!その車、どうしたの?」
「さあね、どうしてだか知らないけど、さっきボクの部屋に現われたから乗ってきた。誰かの贈り物かな?」
「ははーん、ひょっとしてインドの魔法かもね。まあ何でもいいや、よし出かけよう。」
クシー君の体はみるみる小さくなり、次の瞬間にはもう車に乗り込んでいました。


車が走り出す間際、こちらを振り向いたクシー君は、大声で、
「そうだ、煙草をありがとう。マティーニは僕のおごりでいいよ。じゃ、また!」

呆然とする私を残し、2人を乗せた車はカウンターの向こうの闇へと消えて行きました。うさぎのバーテンダーは、やれやれという顔でドミノ缶を棚に戻し、私の前にそっとマティーニのグラスを置きました。

   ★

クシー君の夜の散歩は、こんな風にしていつまでも続くのでしょう。



【なくもがなの補足】
○「前編」で登場した3色のSTAR。いずれもWillsブランドの同じ銘柄ですが、黄色はイギリス本国、紺はインド、そして水色はバングラディシュ製です。
○「中編」のドミノ牌は既出→ http://mononoke.asablo.jp/blog/2010/04/09/5007386
○1月18日付記。散らかしっぱなしは良くないので、最後の1文を加えました。