月にただよう煙2021年03月12日 12時20分22秒

10年目の3.11から1日が経過しました。
今日は一転して肌寒い雨の日。昼には遠雷の音。

   ★

いつの間にか生活の場から消えたものってありますよね。
ブラウン管TVとか、ハエ叩きとか。
灰皿というのも、いつの間に消えたもののひとつです。わが家の場合、来客用の灰皿が今でもたぶん物置の隅にあると思うんですが、もはや誰も使わなくなりました。

   ★

にもかかわらず、新しく灰皿を買いました。多分永遠に使わないであろう灰皿を。


真鍮でできたムーン・マンの表情に惹かれたのと、まさに二度と使われない運命という点に哀惜の情を感じたからです。時代不詳ですが、20世紀半ばぐらいのものでしょうか。売ってくれたのはイギリスの人です。


昔はどこでも紫煙がただよっていました。当時を思い出すと、ここにシガレットの吸いさしを置いた、その指先の表情までもありありと想像されます。おそらくその中指には大きなペンだこが出来ていて、そこに煙草のヤニがうっすらと染みていたことでしょう。(これは私の祖父の思い出と重なっています。)


こういう品は、裏面の表情にも不思議な味わいがあります。
いわば月男が隠し持つ「裏の顔」ですね。


左は以前登場した(LINK)、フランスのビールメーカーが作った彗星灰皿です。
こうして並ぶと好一対。

まあ、灰皿としては使わないにしても、ペン皿やクリップ入れ、あるいはコイントレーとして使うと、ちょっと気が利いているかもしれません。

コメント

_ S.U ― 2021年03月15日 07時54分36秒

>来客用の灰皿
 妙なところに引っかかって申し訳ありませんが、先日、実家の応接間の引き出しから、陶器の塗りの灰皿の5個セットを見つけました。驚くとともに、昔はこんなもの使ったなあと思い出しました。

 むりやり天文民俗に結びつけますが、実家付近では、40年前くらいまでお日待講というのが年に5回程度あり、地区の人が回り持ちで接待当番をしていました。そういう時代には、灰皿が1ダースくらいどの家にも必要だったのだろうと思います。そういうのがまだ残っていると思います。

_ 玉青 ― 2021年03月15日 19時21分55秒

村の各種寄り合いがなくなって、「せめて葬式ぐらいは自宅で…」と頑張っていた世代も亡くなると、もはや沢山の灰皿は無用の長物とならざるを得ませんね。こういうのは語り出すと「新日本紀行」みたいになりますけれど、数多くの灰皿の備えの向こうには、確かにかつてあった村落社会の姿がほの見える気がします。

_ S.U ― 2021年03月16日 07時48分42秒

また、ふと湧いて出た疑問ですみません。
 日本の村落社会に繋がる灰皿、徳利、その他の器類は、最低でも同種の5個セット、あるいはダースでのセットが当然だと思いますが、玉青さんの西洋物のコレクションでも、やはりそのような近隣社会の会合に起因するセット物というのがあるのでしょうか。それとも、これは日本独自に発達したものなのでしょうか。

_ 玉青 ― 2021年03月17日 06時17分26秒

いかに数寄の道とはいえ、さすがに西洋来客セットはアウェイですね(笑い。

海の向こうでも、普段使いの食器とは別に、客人用の食器セットがあるのは、映像や小説で見聞きしますが、そういうのとは別に、いわゆる「村の寄り合い用の什器」がある(あった)のかどうか、その辺になると寡聞にして知らないんですが、想像で言うと多分あった気がします。

本棚から『ドイツの民俗』という本を取り出すと、そこに書かれたドイツ語圏の村々の生活は、日本の村人のそれとほとんど変わりません。冠婚葬祭や収穫祝いにおける大盤振る舞いの様子など、さかんに親類・村人・奉公人に振る舞い酒をして、まあ人間の生態は、どこもそう変わらないですね。それ用の徳利が、ビールジョッキに変わるぐらいのものじゃないでしょうか。

_ S.U ― 2021年03月17日 07時29分27秒

お調べありがとうございます! こういうのは広く世界共通かもしれませんね。出来れば、各国を村落社会の重要性の意味合いによって分類し、それとセット物の什器類の存在との相関を取って調査したいところですが、それは手に余ります。

 また、天文趣味の品物にしても、もし、セット物にそういう物が見いだされたら、それは単なる数寄物ではなく地域の民俗に根ざした(根ざそうとした)物として違った値打ちがあるかもしれません。

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