太歳太白、壁に合す(たいさいたいはくへきにがっす)2023年03月04日 09時47分38秒

タイミングを逸して、いくぶん気の抜けた記事になりますが、今週末の木星と金星の接近。何と言っても全天で一二を争う明るい惑星が並ぶというのですから、これは大変な見もので、何だか只ならぬ気配すらありました。昔の人ならこれを「天変」と見て、陰陽寮に属する天文博士が、仰々しく帝に密奏したり、大騒ぎになっていたかもしれません。

(群書類従「諸道勘文」より)

今回の異常接近はうお座で生じましたが、二十八宿でいうと「壁宿(へきしゅく)」あたりで、今日のタイトルは、そこで太歳(木星)太白(金星)が出会ったという意味です。壁宿は占星では「婚姻に吉」とされるそうなので、折も良し、両者の邂逅はまるで男雛女雛が並んでいるように見えました。

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西洋に目を向けると、ジュピターとヴィーナスはローマ神話由来の名前で、ギリシャ神話だと、それぞれ主神ゼウス美神アプロディーテに当たるので、これまた好一対です。

(シガレットカード「星のささやき(What the Stars Say)」シリーズ(1934)から。イギリスの煙草ブランド‘De Reszke’(デ・レシュケ/デ・リスキー)のおまけカードです))

ただ、神話上、両者に婚姻関係はなく、ゼウスから見るとアプロディーテは娘(母はディオーネ)、あるいは息子(へパイトス)の嫁と伝承されています。そしてゼウスは周知のとおり多情な神様で、正妻ヘラ(星の世界では小惑星ジュノーに相当)以外に、あちこちに思い人がいたし、アプロディーテもアレス(同じく火星に相当)と情を通じたとか何とかで、なかなか天界の男女模様もにぎやかなのでした。

(ギリシャの学校掛図。惑星名はすべてギリシャ神話化されています。内側から、水・エルメス(へルメス)、金・アプロディーテ、地・ギー(ガイア)、火・アレス、木・ゼウス、土・クロノス、天・ウラノス、海・ポセイドーン、冥・プルトーン)

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話を東洋に戻すと、陰陽道では木星(太歳神)土星(太陰神 たいおんじん)を夫婦とみなす考えがあるそうで、これは肉眼で見ても、惑星の実状に照らしても、何となく腑に落ちるものがあります。太っちょで赤ら顔の旦那さんと、派手なアクセサリーを身につけた奥さんといったところですね。