色あせた標本、台湾幻想(その3)2007年10月25日 21時39分17秒

(『虫の宇宙誌』、集英社文庫、1984)

私の台湾イメージには、大人になってから読んだ、奥本大三郎さんの昆虫エッセイがだいぶ影響しているのを認めないわけにはいきません。

特に、初期のエッセイを集めた『虫の宇宙誌』を読むと、それこそ5回も6回も、いやもっと数多く台湾への言及があって、奥本さんがいかに台湾に思い入れがあるかが分かります。

奥本さんは、「戦前の日本で夏休みの宿題として昆虫採集が広く行われ、昆虫採集の黄金時代を呈した頃、日本全国の少年達の黄金郷(エル・ドラド)は台湾であった。」と断言しています(文庫版108-109頁)。

そして、圧巻は何といっても「昆虫図鑑の文体について」という一文。
これは昆虫図鑑という特異な素材を用いて日本語の文体を論じたものですが、凡百の文体論・文章論を遥かにしのぐ優れた内容だと思います。この文章については、いずれまた別項で詳しくとりあげたいと思います。

今はとりあえず、氏の台湾への思いの丈を綴った部分を抜書きしてみます。

(ちょっと長いので、明日に回します)