世界最大の星座早見盤2018年06月27日 20時50分54秒

さて、そろそろ地上の花から天上の花に話題を戻します。
うっかり忘れそうになりますが、そもそも「星のおもちゃ」の話題を書いている途中で、おさる計算機やギッシングの話題になったのでした。
おもちゃの話に戻る前に、肩慣らしに星座早見盤をめぐる話題をひとつ。

   ★

以前、「世界最小の星座早見盤」という記事を書いたことがあります。

世界最小の星座早見盤(前編)

当然、世界最大の星座早見盤は何か?という疑問が続きますが、それについては書いたことがありませんでした。でも、大きな星座早見盤自体は何度か登場しています。

たとえば、フランスのカミーユ・フラマリオンが監修して、19世紀末に出た早見盤は、 56cm 四方という大きさを誇っていました。


さらに、上の記事のコメント欄で、「パリの暇人」さんから、フランスの Haguenau による直径約 61cm という巨大な早見盤(1830年代)や、さらに完成品ではないものの、フランス製の早見盤用星図(19世紀)に、直径約 68cm という大物があることをお知らせいただきました(いずれもパリの暇人さんご自身のコレクションの一部)。

それらには及びませんが、手元の品としては、ドイツのフォン・リトロー(Joseph Johann von Littrow、1781-1840)の『天界の驚異(Wunder des Himmels)』の1910年版――この本は、著者の死後も他の人が改訂を続け、長く版を重ねました――の巻末付録に、直径 52cm という早見盤用星図が付いていることにも触れました。


さらに、日本に目を転じると、京都のLagado研究所の淡嶋さんが、アンティーク商売の傍ら営まれているゲストハウスに飾られている、昔の理科教材とおぼしい早見盤があります(昭和30年代?)。その正確な大きさは聞き漏らしましたが、おそらく 7~80cm 四方はあろうかという大物で、これまでのところ、これが星座早見盤の暫定世界王者でした。
 

   ★

しかしです。
ついにその記録を上回る大物が名乗りを挙げました。それがこちら。


どうです、唖然とするほど大きいでしょう。その直径は人の背丈ほどもありますから、おそらく直径 180cm 内外。現時点では、文句なしの世界王者です。

これは1997年に、イギリスのBBCが開局75周年を記念して作った絵葉書で、写っているのは、天文啓発家として名高いパトリック・ムーア氏(1923-2012)の壮年期の姿です。


この1997年というのは、BBC開局(1922)75周年であると同時に、ムーア氏がプレゼンターを務める名物番組「Sky at Night」が、放映開始40周年を迎えた年でもあり、絵葉書はそれを記念する意味もあったようです。

ちなみに、この星座早見盤はフィリップス社のヴィンテージ早見盤(仮称「ラウンドタイプ」→こちらの記事を参照)を、そのまま大きくした姿をしています。もちろん正規品ではなくて、ディスプレイ用に、あるいは番組用に特注した品でしょうが、それにしても大きいですね。

コメント

_ S.U ― 2018年06月27日 22時57分07秒

脱線して昭和歌謡のほうばかりにうつつを抜かしていても申し訳ないので、プロパーの話題にも少しお邪魔します。

 このムーア氏が解説する星座早見盤は、いかにもBBCといった感じですね。掛け図くらいの大きさの星座早見が教室用に普及していてもおかしくないとは思いますが、そのような発想が出る頃には、学校用の小型プラネタリウムが普及し始めていたのかもしれません。少なくとも昭和44年頃に田舎の小学校にあったことは以前ご報告しました。
 
 でも、この大型星座早見は、個々の星座を教えるためではなく、星座早見の使い方や原理(恒星の動きの法則)を教えるためのものかもしれませんね。プラネタリウムとは違うので再考が必要なようです。

_ ガラクマ ― 2018年06月27日 22時57分08秒

 直径180㎝というのは凄いですが、情報収集力もさすがですね。

 うちの博物館には、直径約80㎝のコスモサインがありますが、電子的、電気的なものを加えると星座の方向を示せるものとしてはプレネタリムが最高に大きいと思います。
ただ、早見盤ではないですね。

 また、家には直径4cm程のキーホルダー型の星座早見盤もありますが、時計の文字盤と同じく、老眼の私には”早見”にはなりません。

早見盤の定義にこだわるつもりはありませんが、いろいろな目的があってそれに特化したもの、汎用性が乏しいものは、逆に興味をそそられます。

_ パリの暇人 ― 2018年06月28日 09時11分30秒

星座早見といえば 今月のはじめに イギリスの Peter GrimwoodがCard Planispheres  A Collectors' Guide (ISBN13 978-0-9551336-1-9)というユニ-クな本を出版しました。1冊 £27.5 + 送料です。

_ ガラクマ ― 2018年06月29日 05時52分17秒

 パリの暇人様。情報ありがとうございます。早速注文いたしました。
到着が楽しみです。

_ 玉青 ― 2018年06月29日 12時18分18秒


○S.Uさま

あはは、昭和歌謡の方もしっかり拝読しましたよ。(^J^)
ときに教材としての星座早見盤ですが、画像をよく見たら、「○○式星座指導盤」と書かれているのが読めました。何となく曖昧な感じもしますが、ここにはS.Uさんがおっしゃるように、星空を教えるのと、星座早見盤の使い方を教えるのと、きっと二つの意味合いがあったのでしょう。星座投影機を使ったミニプラネタリウムももちろん素敵ですが、あれは円天井が必要ですし、円天井の大きさから言って、一度に見られる児童数にも限りがあったでしょうから、教室で先生が説明するには、むしろこの巨大早見盤の方が便利だったかもしれませんね。お値段もたぶん投影機よりは廉価だったでしょう。

○ガラクマさま

>直径約80cm

コスモサインシリーズには、そんな巨大なバージョンもあったとは。
現代の天文時計として、天体望遠鏡博物館には至極ふさわしい品ですね。
ときに小さい早見盤といえば、円筒を覗き込むようにして使う「ステラスコープ」という商品がありましたが、あれは星座早見盤の現代的展開として、なかなかよく工夫された品だった気がします。

○パリの暇人さま

記事の方で、勝手にお名前を挙げさせていただいたこと、どうぞご容赦ください。
そして、星座早見盤についての新刊情報ありがとうございました!これは有用な本ですね。早速私もガラクマさんに続いて注文しました。

_ S.U ― 2018年06月30日 08時21分32秒

ガラクマさんのご投稿を拝見して考えました。星座早見で極小、巨大な物を考えると、人力手動式ならどうしても操作できる限界がありますが、電気時計に組み込めば、竜頭かボタンでいいわけで、操作の問題がぐっと減りますよね。すると領域がどっと広がりそうに思いますが、コスモサインのアイデアは特許なんでしょうか。

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