世界最小の星座早見盤(前編)2012年12月04日 13時22分57秒

寒サニモ頻断ニモ負ケズ、記事の更新を続けます。

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以前、我楽多倶楽部製の、小さな小さな星座早見盤を紹介したことがあります。
http://mononoke.asablo.jp/blog/2010/07/26/5249861

これは、紙で出来たふつうの星座早見としては、依然世界最小かもしれません。
しかし、紙製という制限を取り払うと、世の中にはさらに小さな早見盤が存在します。しかも、内部に精巧な機構を備え、本物の星空とまったく同じ周期で回転し続けるという、まさにミクロコスモスと呼ぶにふさわしい早見盤。

ただし、それはいわゆる「星座早見盤」として売られているのではなくて、商品としては「時計」に分類されます。

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シチズンが ― というよりも、同社に在籍した上原秀夫氏が、1980年代に前身のコスモサインシリーズを世に送り出して以来、不断の改良と試行錯誤を重ねた末に、2005年に完成させた究極の天体時計、それがASTRODEA(アストロデア)シリーズです。

(「アストロデア」2006年バージョン。アストロアーツさんのサイトより転載。http://www.astroarts.co.jp/news/2006/07/19astrodea/index-j.shtml

と、こんな風に書くと、なんだかメーカーのお先棒をかついで、いたずらに煽っているだけのように思われるかもしれません。しかし、上原氏の開発秘話を読んでいただければ、上のことが単なるセールストークではないことがお分かりいただけるでしょう。

ADTRODEA 開発秘話
 http://www.astrodea.jp/story/index.html

…と書こうとしたら、なんと肝心の「開発秘話」が公開終了しているのを知って愕然。ほんのつい最近まで見られたのに…。ネットの世界もまことに無常迅速。

気を取り直して、以前拝読した内容を以下略記します。

上原氏は、小学生時代の小口径屈折での観望体験から始まり、高校時代には木辺成麿氏の『新版反射望遠鏡の作り方』に学んで、鏡面研磨から組み上げまでの苦労を一通り体験されたという、正統派の(元)天文少年です。
1974年にシチズンに入社されてからも、一貫して天文マニアであり続け、2011年には東亜天文学会賞を受賞されたという、そのご経歴からも、氏の時計開発の背景は想像がつくことでしょう。
さらに氏は、自らの理想の製品を作り上げるために、シチズン本体を離れて、関連会社のシチズン・アクティブ社に移籍。そこで天体時計専門の事業部を設立し、アストロデア・ブランドを育て上げられたというのですから、それが凡百の色物商品とはまったく異なるレベルの製品であることも、お分かりいただけるはずです。

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私には時計趣味がまったくないので(時計のカラクリには興味がありますが、高級時計をコレクションする性癖や資力はありません)、この美しいモノについても、ウォッチコレクター目線ではなしに、あくまでも一個の「機械式早見盤」として、天文古玩的目線で書こうと思います。

(この項つづく)