空色の宇宙、金のロケット2024年07月13日 08時03分09秒

雨が上がり、セミが盛んに鳴いています。

昨日は気分がふさぐ記事を書いたので、何かすっきりするものを探しているうちに、こんな品が目に留まりました。

(全長47mm)

空色の宇宙を背景に、金の星と金のロケットが美しいエナメルのピンバッジ。
チェコの人から入手したもので、「Astronomický kroužek」というチェコ語は、英語にすると「Astronomical circle」、要するに天文クラブ、天文同好会のことです。


1960年代頃の品と思いますが、当時はまだ「チェコスロバキア」だった同国の某天文クラブの会員章。当時の星好きの少年少女たちの胸元を飾ったのでしょう。


天文クラブの会員章にロケットが登場する、要するに星好きは同時にロケット好きでもある…と無条件に思われていたところが、時代を感じさせます。
世はスペースエイジ、陣営の東西を問わず、ロケットのフォルムと宇宙イメージは分かちがたく結びつき、子どもたちの憧れを誘ったのです。

コメント

_ S.U ― 2024年07月13日 09時52分35秒

おっとっと、すみませんが、また、こういうものを拝見するとロケットの形状に引っかかってしまいます。これは、ソ連のプロトンロケットのように見えますが、いかがでしょうか。
https://space.skyrocket.de/doc_lau_fam/proton.htm
なんとなくですが、プロトンKシリーズだと思います。
http://www.astronautix.com/p/proton-k.html
先端が三角になっているのと、少し伸びて塔のようなのがついているのと2種ありますが、これは、後者が有人宇宙船だと思います。お持ちのお品はどっちつかずで微妙です。

 もちろん、適当にデザインしてたまたま似ただけということかもしれませんので、それでもけっこうです。その場合は、「たまたま」の度合いと「酷似」のレベルかどうかが問題になりますね。私一人ではどちらとも判定できません。

 仮にプロトンKだとしますと、これが打ち上げられて日の目を見たのは1967~68年です。例によって機体の形状も目的も秘密でしたが(第1目的はトップシークレットの有人月周回でした)、実際屋外を飛んでいくものだし、東側での商用目的もあったでしょうから、チェコスロバキアの天文ファンには、リークしていたのかもしれません。型式性能が正式に公表されたのは、ゴルバチョフ時代だと思いますが、公式と非公式のあいだにレベルが何段階もある国ですから、時代は特定できません。

_ 玉青 ― 2024年07月14日 11時06分10秒

おお、これはいい具合に時代が透けて見えますね。
件のバッジが現実のプロトンロケットの‘写実’かどうかはさておき、東側ではプロトンロケット的な形象こそ「ザ・ロケット」のイメージとして流通していた…というのは、大いにありそうなことですよね。

プロトンロケットの特徴は、何といっても1段目を取り巻く目立つ燃料タンクでしょうが、同時代のアメリカの子供たちが抱いた「ザ・ロケット」のイメージは、たぶんこの燃料タンクの部分が尾翼に置き換わった姿じゃないでしょうか(この辺はS.Uさんのご教示を乞います)。

日本の片隅に生を受けた子供時代の私も、ロケットと聞くと、より「ミサイルっぽい姿」を思い描いていた気がしますが、あれはV-2の影響でしょうかね?

_ S.U ― 2024年07月14日 14時57分34秒

各国の宇宙に憧れる少年少女は、それぞれロケットはどういう形であって欲しいと思ったかという問いかけですね。私に力があれば、ぜひ調べてみたいところです。「スプートニクに始まる」の続編、普遍版に当たりそうに思います。ただ、当時、どれほどの情報がリークしていたかまったくわからないので、私には力不足です。
 
 私は、ゾンドもルノホートもベネラもサリュートもすべて1970年代前半から知っていましたが、それを打ち上げたプロトンKの形を知ったのはずっとあと1990年代でした。「プロトンロケット」というものがあるというのは、1980年代に聞いていたかもしれません。とにかく、20年間、どんなロケットが運搬したかは知らず、打ち上げの光景も想像できずに過ごしていました。今、ネットを探しても、当時の打ち上げ画像は、発射台のゾンドを除いて見つかりませんので、ずっと秘密だったのだと思います。それをチェコスロバキアの天文ファンが知っていたのなら、身内からのリークが疑われ、興味深いです。ご指摘のように、プロトンロケットの周りのはメインの液体ロケットの燃料ですから、西側のイメージとはだいぶ違うので、特別ですよね。そのへんを東側のマニアは昔から知っていたのか。ISSの時代以降の画像はネットに腐るほどあって皮肉に思います。

 日本の戦中の子供たちは、V-2を知っていたのですよね。だったら、おっしゃるように思います。私のイメージする最初のロケットは、V-2を知らない時から、確かにあの形でした。そこには、手塚治虫や横山光輝あたりの影響もあるかもしれません。いっぽう、戦後のアメリカのミサイルだと、「レッドストーン」だと思いますが、これは朝鮮戦争よりあとになるので、多少、後発になったかもしれません。レッドストーンやジュノーは、1960代のマニアの子どもは知っていたでしょうが、特に形に特徴がないのが痛いかもしれません。名前を聞くくらいではなかったでしょうか。

_ 玉青 ― 2024年07月15日 15時48分43秒

早速のご教示、ありがとうございます。

温故知新で振り返ると、S.Uさんには、以下の記事のコメント欄でも既にご教示いただいてましたね。今回の件と併せて、だいぶ深掘りされてきたと思います。
https://mononoke.asablo.jp/blog/2022/08/28/9521406
https://mononoke.asablo.jp/blog/2022/08/29/9521748
S.Uさんの方で、本件とその周辺の話題について整理される折がありましたらぜひ。

>手塚治虫や横山光輝あたりの影響

あ、そうです、そうです。自分自身のロケットイメージは、間違いなく漫画の影響ですね。さらにその漫画家たちのロケットイメージは?といえば、結局のところ同時代のアメリカの雑誌・書籍に行きつくのかなと想像します。そこには現在進行形のリアル・ロケットと、アメコミ的なイマジナリー・ロケットがおそらく混淆していますね。

_ S.U ― 2024年07月15日 21時10分47秒

「温故知新」情報のご引用ありがとうございます。
確かに、今回の件に対して、前回の飛行体の形状の議論は重要な示唆を与えているように思います。手塚治虫や横山光輝らの漫画には、当然のように、兵器としてのロケットと宇宙の乗り物としてのロケットが同じストーリーで出てくること多かったと思いますが、作者は、それを少年たちの気持ちに伝える記号、シンボルとして、形状的に差別化したかったと思います。ところが、現実に例を求めると、マーキュリー・レッドストーンとかジェミニ・タイタン2とか、皮肉にも、ICBMの上に宇宙船が乗っかっているような次第ですので、現実とのギャップに悩んだのではないかと思います。

 そのような「心象」の歴史を整理できればいいのですが、私一人では力不足です。また、玉青さんを含めて数名で合議体を作って検討できる機会があればと存じます。

_ 玉青 ― 2024年07月16日 19時11分28秒

「日本ロケット文化史学会」の旗揚げですね!
ええ、ぜひ末席にお加えください。

_ S.U ― 2024年07月17日 06時39分38秒

>「日本ロケット文化史学会」の旗揚げ
 ありがとうございます。そういうことにさせていただき、今後、随時、随所で有識の方々のご意見を伺いたいと思いますので、機会があればよろしくお願いいたします。玉青さんに限らず、知識を伝えてくださる方はどなた様も「有識」でございすので、よろしくお願いいたします。

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