本の標本、本のオブジェ ― 2024年09月11日 18時18分13秒
名古屋・伏見のantique Salonさんが店内を改装されて、お店の一角にライブラリコーナーができました。
お店を訪問されたことがない方には、なかなか構造が把握しづらいと思いますが、antique Salon さんは、奥行きのある、細長いお店です。全体は鉄アレイ状といいますか、両端(道路に面した側と奥側)に広いコーナーがあり、その間を通路状のスペースがつなぎ、その通路部分も含め、店内のあらゆる場所が、奇妙で美しい品で満ちています。
正面、ドアの向こうが道路に面したコーナーで、左側、壁の向こうが通路状の店舗部分。ドアの手前に続くフローリング部分は、店舗外にある本来の通路です。
昨日は道路側のコーナーで、店主の市さんと冷たいものを手に話しこんでいましたが、新たにできたライブラリコーナーは、
それとは反対側、道路からは遠いコーナーの、
そのまたいちばん奥に設けられてます。
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その完成を記念して、「本の標本、本のオブジェ」展が始まっています。
■特別展示室 第1回企画展 『本の標本、本のオブジェ』
○期間: 2024.9.7(土)~9.23(月) 12時 ~ 19時(水曜・木曜定休)
○場所: antique Salon 特別展示室・図書室
名古屋市中区錦2丁目-5-29 えびすビルパート1_2F
○参加者(順不同・敬称略):
美術家・造形作家/ 川島 朗、UAMO/ 高木綾子、小説家/伽十心、
メルキュール骨董店/矢野 文、夕顔楼/店主、コレクター/久保
カルトナージュ作家/竹内朋子、BiblioMani/店主、
VOUSHO Coffee Factory/店主、antique Salon/市ゆうじ(+天文古玩)
今回並ぶのは全部で22冊の本。
“本好き”という共通項以外、年齢も職業も背景もバラバラな11名が、「自分の根幹にある本」と、「装丁の美しい本」を、それぞれ1冊ずつ紹介するという、それ自体不思議な企画です。(もうひとつの共通項は、市さんの知己ということですが、私もそこにまぜていただいたものの、他の方のことは、個人的には殆ど存じ上げません。)
会場にはその22冊の本が、標本ないしオブジェとして展示されています。
(左:メルキュール骨董店・矢野文氏セレクト/アンリ・ボスコ(著)『シルヴィウス』、右:antique Salon・市ゆうじ氏/宮本輝(著)『流転の海』)
(左:小説家・伽十心氏/ジョイス・マンスール(著)『充ち足りた死者たち』、右:BiblioMania・店主氏/奥崎謙三(著)『宇宙人の聖書!?』)
(左:コレクター・久保氏/『バタック族の呪術暑(19世紀)』、右:VOUSHOU Coffee Factory・店主氏/小田実(著)『何でも見てやろう』)
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市さんの企画意図とは一寸ずれるかもしれませんが、「これは本の展示である以上に、人間の展示だなあ」と思いながら、会場を拝見していました。自分の人生観や美意識を本に託すことは、一種の表現行為にほかなりませんし、実際、どの本の背後にも読み手の濃厚な気配を感じたからです。
文字通り十人十色の皆さんと、機会があれば膝詰めで語り明かしたいとも思いましたが、でもこれはそういう単純な話でもなくて、本の向こうにその読み手の姿をよみがえらせることは、我々観覧者に許された別種の表現行為であると同時に、そのよみがえった読み手と言葉をかわすことこそ、ここでは一層濃密な体験ではないか…とも思いました。
もちろん読み手の方々は、私の狭い了見で計ることのできない存在ですから、リアルな交流が生じれば得難い経験になるでしょうが、そこで得られる楽しみは、たぶん上で述べた仮想交流とは別の位相に属する気がします。(…と、ここまで考えてくると、結局私は市さんの企てに、半ば乗せられたことになるのかもしれません。)
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