戦火を越えたアーミラリー ― 2025年02月27日 19時52分50秒
素晴らしいアーミラリースフィアがやってきました。
もし私が大富豪だったら、本物の16~17世紀のアーミラリーを手にすることもできるのかもしれませんが、私は大富豪でも小富豪でもありませんから、これは今の私が望みうる最上の品だと断言できます。
何せ外観、構造、機能、そしてクラフトマンシップにおいて、これは往時のアーミラリーと同等か、それ以上なのですから。本当によくぞ我が家に来てくれたという思いです。
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この素晴らしいアーミラリーを作ったのは、これまで何度か言及した、ウクライナのブセボロード(Vsevolod)さんが主宰するマスターテレブルス(MasterTerebrus)工房です。
マスターテレブルスは、アストロラーベをはじめとする古天文機器の良質な復刻品を、きわめてリーズナブルな価格で提供している、まことに得難いメーカーで、そのおかげで、私の部屋がどれほど充実したか、本当に感謝してもしきれないほどです。(その一連の製品は、過去の品の単純なレプリカではなく、現代でも使用できるよう、座標目盛りが正確に再計算されているという点に、ブセボロードさんの確たるポリシーを感じます)。
そのマスターテレブルスが生み出したとびきりの逸品がこれです。
マスターテレブルスの製品は多くの場合、特定のモデルに基づいて作られていますが、このアーミラリーは例外で、ヨーロッパ各地の博物館が所蔵する16~17世紀の複数のアーミラリーを元に作られた、一種の「アーミラリーの理想形」です。
古風な面持ちの素敵なアーミラリー。これさえあれば、私の部屋はいつでもルネサンス期の天文学者の部屋に早変わりです。何を大袈裟な…と思われるかもしれませんが、少なくとも私の脳内ではそうなのです。
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…と、手放しで賞賛したあとで、このアーミラリーにはある陰影が伴っていることも書き添えねばなりません。
このアーミラリーの製作は大変手間がかかるので、もうこれ以上作るのをやめようか…という話になっていたそうですが、それでもあえてもう1台、すなわち私の手元の1台を作ってくれたのは、ウクライナ軍に在籍する知人を支援する資金を得るため、ブセボロードさんとお仲間たちが一肌脱いだ…という事情が伏在しています。
このアーミラリーは、その美しい外観の奥に苛烈な戦争の影を宿しており、すでにそれ自体、一種の歴史性を帯びているのです。このアーミラリーを見るたびに、私はそのことを併せて想起することになるでしょう。
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